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ふたりの男優のみで語られるイギリス発のホラー演劇『ウーマン・イン・ブラック』が今夏、7年ぶりにPARCO劇場にて上演される。世界40か国以上で翻訳上演され、日本では過去に6回上演。いずれも斎藤晴彦の名演技が記憶に残る傑作である。薄暗がりの観客のいない劇場を舞台に、中年の弁護士が若い俳優とともに、劇中劇の形を取りながら過去の恐怖体験を再現していく。今回、斎藤が演じてきた弁護士キップス役を勝村政信が引き継ぎ、相対する若き俳優役に、本作が舞台出演2作目となる岡田将生が挑むこととなった。
「斎藤さんは名作と言われるこの作品を、日本でも名作に仕上げた方。何か大きな力を背負っていることが、その存在だけでわかる方だった。その人がやってきた役をやるのは正直キツいな、すごいものが来ちゃったな…という思いです。でもそれとは別に、やったほうがいいと思ったんですね。オリジナル演出家(ロビン・ハーフォード)とともに芝居作りをすることで、翻訳物に対する怖れや恥をなくすことができるかもしれないと」(勝村)
「僕はまだ舞台を一回しかやったことがないので、いろいろ経験してみたかったのと、ふたり芝居というものにすごく惹き付けられました。勝村さんは百戦錬磨な方ですし、舞台に対する姿勢を尊敬しているので、ご一緒できることが嬉しいです」(岡田)
ホラー演劇という特異な形態の作品に挑むにあたり、「ホラー映画は結構観るので怖い話は苦手ではないです。勝村さん、嫌いなんですよね?」と岡田が問うと、勝村が「ホラー映画とかとんでもない! イヤだな〜」と首をすくめて周囲の笑いを誘う。だが続けて「観客とともに時間と場所を共有し、同じ恐怖を体験していく。全員が等価でひとつの作品に向かっていけるという、すごい力を持った戯曲です」と、あらためて作品の巧妙さに感じ入るように語った。
「僕自身、この台本を読み終わった時に鳥肌が立って、怖くて素直に後ろを振り向いてしまいました(笑)。その時の感覚を忘れずに稽古場に持っていって、新鮮なままに芝居にしていきたいです。日々挑戦しながら作品をどんどん突き詰めていけるので、舞台の稽古はとても好きです」(岡田)
「しっかりとした歴史のある作品ですから大きな枠組みは変わらないと思う。それを僕らがちゃんと踏襲したうえで、何か今までとは違った化学反応が起こればいいなと。ほんのちょっとしたことが、大きな変化を感じさせるものにつながっていけば、僕らふたりが新しく作る意味があるんじゃないかと思っています」(勝村)
膨大な量の台詞を始め、遣り甲斐あふれるふたり芝居を前に「合宿でもしようかと話しています」と笑い合うふたり。熱き奮闘の末にはきっと、私たちに背筋の凍る驚きの演劇体験をもたらしてくれるだろう。
公演は8月7日(金)から30日(日)まで。チケットの一般発売は6月13日(土)午前10時より。チケットぴあではインターネット先行抽選を5月23日(土)午前11時より受付。
取材・文 上野紀子
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