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演 劇
20世紀のアメリカ現代演劇を代表する作家、ユージン・オニールが自身の家族を描いた『夜への長い旅路』が上演される。ユージンを重ねた次男のエドマンドを演じるのは満島真之介。今年はじめの『ハムレット』など、舞台での活躍も目覚しい注目の役者に、ピュリッツァー賞を受賞し、演劇史上最高の自伝劇といわれる作品に臨む思いを聞いた。
この自伝劇で描かれるのは、実にすさまじい家族の関係である。かつては有名なシェイクスピア俳優だった父。過去のつらい出来事から抜け出せずモルヒネ中毒に冒された母。酒に溺れて自堕落な生活をしている兄。そして、肺病を患い引きこもっているエドマンド。この行き場のない4人が、ある日、夜までの長い時間を不協と対立のなかで過ごすことになる。「台本を読んだだけでもキツかったです。これを演じたら現実世界に戻れないんじゃないかと思うぐらい。でも、たぶんこの家族は、愛ゆえにこうなってしまったところがあると思うんです。僕自身も結婚して新しい家族ができたので、家族の愛とは何なのかということを、演じながら考えさせられるんじゃないかなと思っています」。
ユージン・オニールは、この戯曲があまりにも赤裸々な内容のため、死後25年間は発表することを禁じていた。それほど強い思いを持って書いた作品に、作者自身の役として登場するとなればプレッシャーも半端ないだろう。しかし、「プレッシャーよりも、素晴らしい場を与えられたという喜びのほうが大きい」と、満島はきっぱり言う。今回の出演は、彼のデビュー作である『おそるべき親たち』の演出を手がけた熊林弘高から、「当然やるよねという感じで声をかけられて(笑)」決まったものでもある。「デビューから5年。心も体もいろんなものを乗り越えてきた自分として、新たなステージに立てるのが楽しみ」と頼もしい。
母親役にそのデビュー作で親子役を演じた麻実れい、父親役に益岡徹、兄役に田中圭が扮する。この4人で何が生まれてくるのか。「痛いけど、やさしく、きれいな、愛に包まれた空気になるんじゃないかなと思うんです。根本には絶対的な愛情があるから。それに熊林さんが、“こんなことできないって思うようなことも気づいたらやっちゃってる”という演出をなさるので(笑)。きっと本当に家族として生きている感覚になると思います」。その生々しさは、きっと客席をも侵食するに違いない。舞台だからこそ得られる快感である。
東京公演は9月7日(月) 〜 23日(水・祝)までシアタートラム。また大阪公演は9月26日(土) 〜 29日(火)まで梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて上演。ともにチケットは発売中。
取材・文:大内弓子
撮影:福井麻衣子
スタイリスト/伊藤省吾 ヘアメイク/戸田和樹
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