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イギリス発、ホラー演劇の傑作『ウーマン・イン・ブラック』が8月7日(金)、東京・PARCO劇場にて開幕する。同劇場では7度目の上演となる人気のふたり芝居で、今回は岡田将生と勝村政信の新コンビが誕生。中年の弁護士(勝村)が若い俳優(岡田)とともに、過去の恐怖体験を劇中劇の形で再現していく物語だ。オリジナル演出家ロビン・ハーフォードを招いて密な稽古が続く中、注目の新コンビの奮闘を覗いた。
稽古場に入ると、ウォーミングアップなのか岡田と勝村がサッカーのリフティングを延々とラリーしている。ハーフォードがふたりに近づいて簡潔に指示を告げ、リラックスした雰囲気のなかで立ち稽古が始まった。はっきりとした発声で素直な表現をみせる岡田に対し、勝村はさまざまな変化球を放って稽古場の空気を楽しく揺るがす。ホラーと思いきや、コミカルな味わいだ。こらえきれずに岡田が吹き出すが、ハーフォードもふたりの掛け合いを嬉しそうにみつめている。劇中劇では岡田が若き日の弁護士に扮し、勝村はひとりで多役を担うため、見応えのある“勝村劇場”を岡田も、演出家もともに楽しんでいるかのよう。だがクライマックスに近づくとムードは一転。真剣な岡田とひょうひょうとした表情の勝村、ふたりのバランスのズレが不思議に胸をざわつかせる。少し前まで笑いの響いた稽古場が、しんと静まり、得体の知れない戦慄が忍び寄る。終始、頷きながらみつめていたハーフォードの「Well done!」で緊張が解けた。談笑しながらの演出チェックの後に休憩に入るや、岡田と勝村は再びリフティング合戦を開始。その喜々としたやんちゃな素振りと直前の緊張感とのギャップに、頬が緩む。ふたりの俳優と演出家が、それぞれの能力に敬意を払い、心から信頼して実直に作業を積んでいる様子が好印象だった。「こんな穏やかな稽古場は僕、初めてです」と笑う勝村に話を聞いた。
「26年もこの作品を演出し続けているロビンさんは、名匠ですよね。静かに状況を説明するだけで、自然に彼の求める方向へと僕らを導いていく。また岡田くんは身体的なポテンシャルが高く、身体をうまく使って声を出すことができる。恥ずかしがりやで、それを隠すことなくそのまま提出できる強さがある人です。過剰な演技を選択せず、自分の役と演出家のリクエストに対して、非常にシンプルに奉仕している。僕にとって理想の相手ですね」
ホラー演劇と謳われるが、自身が感じた作品の一番の魅力は「根本に愛があること」だと言う。「皆が良かれと思って動くことが悲劇につながっていく。岡田くん扮する若い俳優は、弁護士に感情移入するほどに同じ悲劇に到達してしまうんです。この芝居が巧妙なのは、観客が若い俳優と同じ目線になるところ。彼の恐怖がすべて、お客さんの恐怖に変わっていくんですね。お客さんには、この作品がウエストエンドで26年間ロングランされている意味をぜひ問いに来ていただきたい。その答えは岡田くんの明確な芝居にあると、僕は思っています」
絶妙のコンビネーションが生み出す愛と恐怖。劇場の暗闇でその感覚をぜひ共有してほしい。
取材・文 上野紀子
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