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キャラメルボックスの30周年記念公演の第3弾となる『時をかける少女』が7月28日、東京・池袋のサンシャイン劇場で幕を開けた。
原作は言わずと知れた筒井康隆のSFジュブナイル小説の名作で、アニメを含め幾度となく映像化されてきたが、意外にも舞台化は今回が初めてとなる。物語の舞台は現代。札幌で両親と暮らす女子高生のマナツ(木村玲衣)は、目を患った伯母の和子(坂口理恵)の世話をするために上京し幼馴染でいまは和子の大学での教え子でもある輝彦(池岡亮介)とも再会を果たすのだが、輝彦と訪れた大学の研究室でラベンダーの香りのする煙を吸ったことで時空を超えるタイムリープの能力を身につけ……。
“タイムリープ”、“ジュブナイル”というキーワードだけでも、キャラメルボックスとの親和性の高さがうかがえるが、本作の特徴は、かつての「時をかける少女」の32年後の話として、その世界観や設定を受け継ぎ、「正統派続編」ともいうべき物語を紡いでいる点。マナツの伯母の和子は、言うまでもなく原作の主人公の女子高生で、いまでは40代後半となった芳山和子である。イマドキの若者のマナツを主人公に、誰が研究室であのラベンダーの香りの薬を作ったのか? という謎解きが展開するのだが、そこから32年前の和子と彼女の初恋の相手である深町一夫のドラマの“つづき”が解き明かされていくという仕掛けになっている。とはいえ、原作の物語を知らずとも、和子と深町の32年前の物語も自然にわかりやすく描写されており、小説やかつての映画やドラマの“時かけ”を知るオールドファンのみならず、若い観客も全く問題なく、マナツと和子の2世代の物語を楽しめる。
マナツがタイムリープを重ねることで、上京して数日のやり取りが何度も繰り返されるのだが、そこにキャラメルボックスらしい笑いが散りばめられており、物語はサスペンスなのに笑いが絶えず、繰り返しの場面も全く飽きさせない。タイムリープの表現方法は見てのお楽しみだが、シンプルながらも光と音響、役者の肉体を駆使した舞台ならではの演出で、実際に劇場の空間がタイムリープで歪んでいるかのような生々しさを感じさせる。
ちなみに32年前というのは大林宣彦監督・原田知世主演による劇場版が公開された年。初の舞台化なのに、原作を知らなくとも、どこか懐かしく心地いい。30年という時間を感じさせてくれる記念公演にふさわしい演目となっている。
公演は東京・池袋のサンシャイン劇場にて8月9日(日)まで、8月20日(月)から大阪・サンケイホールブリーゼで。
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