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コミックの累計発行部数は3億2000万部を記録し、国内のみならず、海外においても人気のメガヒット漫画『ONE PIECE』が歌舞伎化! 演劇界に留まらない注目を集めている、スーパー歌舞伎U(セカンド)『ワンピース』が7日夜、東京・新橋演舞場でついに幕を開けた。前日夕方には、主役ルフィ役(ほかにハンコック、シャンクスの3役)を務める座頭で、演出(横内謙介との共同演出)も手掛ける市川猿之助の囲み取材、続けてゲネプロが行われた。
囲み取材で本作におけるこだわりを問われた猿之助は、「アニメや漫画をそのままやらないということ」とキッパリ。「なぜ歌舞伎でやるかということで、換骨奪胎をしてやらせていただきました。アニメ版の声優の方々にも『自分たちと同じようにはむしろやってほしくない。違うものが観たい』と言っていただき、それに勇気を得て新しいものを作りました。賛否両論あると思いますが、賛否両論あってこそ本物」と、新たな世界を切り拓く者としての覚悟のコメントを寄せた。
苦労した点を問われると、「全てが苦労ですよ」と苦笑い。「スーパー歌舞伎のあらゆる手法を取り入れて、今やれるだけのことを全部やってしまった」という猿之助の言葉は、続いて行われたゲネプロで、真実であることが証明された。“スーパー歌舞伎”の代名詞・宙乗りはもちろんのこと、滝(本水)の中での大立廻り、巨大クジラ(!)の登場、フライング、プロジェクションマッピングなどの最新技術を用いた映像……。各キャラクターの必殺技も、歌舞伎的なアナログさと斬新なアイデアの融合で、様々に表現される。従来の歌舞伎の概念を覆すようなセット、衣裳、演出も多数。例えばサーフボードに乗った猿之助ルフィが3階席にも届くダイナミックな宙乗りをする二幕ラストでは、ゆずの北川悠仁が書き下ろした主題歌「TETOTE」が流れ、客席を巻き込んでの大合唱という、音楽ライブさながらの光景が繰り広げられた。そうした革新の一方、4時間50分の大作を見終えて最も感じたことは、歌舞伎ならではのカッコよさ! “麦わらの一味”が行う七五調の名乗り、アッと驚く早変わり、花道を颯爽と駆け抜ける様、ビシッとキメる見得。「これぞ歌舞伎!」な表現のワクワク感が、全編通して響き渡る柝の音とともに記憶に焼きついている。衝撃的に斬新だが、歌舞伎から逸脱していない。『ONE PIECE』という誰をも魅了する冒険心にあふれた原作が、歌舞伎に新たな可能性を示した。
公演は11月25日(水)まで東京・新橋演舞場にて。
取材・文/武田吏都
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