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長塚圭史作・演出、古田新太主演の舞台『ツインズ』が12月6日(日)、東京・PARCO劇場にて開幕する。『LAST SHOW』(2005年)以来、実に10年ぶりの両者のタッグが話題のほか、多部未華子、りょう、石橋けい、葉山奨之、中山祐一朗、そして『SISTERS』(2008年)に続いての出演となる吉田鋼太郎と、魅力の顔が揃った注目作である。気になる長塚の新作について「圭史君の作品では『SISTERS』が最高傑作だと思っているんですが、あの系統ですね」と語る吉田に、稽古場にて話を聞いた。
「個々のシーンは過激なのに、作品の根底に流れるものは静けさなんです。そこが怖い。テンションの高い題材を、緩やかに、穏やかに書いていく。長塚圭史がまたひとつ成長したように感じました」
時代は現代なのか、近い未来なのか。海辺の家に集まった人々の会話を追ううちに、彼らが家族であることがわかってくる。一見たわいもない言葉のやりとりにしばしば頬が緩むが、つねにじんわりと場を覆うのは妙な緊迫感だ。
「ゆっくりと彼らは破滅に向かって動いている。そんな時間が取り囲んでいますよね。この海はかなり汚染が進んでいるのかもしれない。危険区域に近い海なのか……、そこはあえてはっきりさせていないんです。会話には謎が散りばめられていて、観る者にどうとらえますか? と投げかけ、本当の現実を見てほしい、目をそらしてはいけないのでは? と突きつけている気がします」
吉田が演じるのは一家の長男であり、古田扮するハルキの兄リュウゾウだ。海に消えた妹のことを思い、海に還る日のことを夢見ている…、そんな不思議な一面をのぞかせる。「圭史君が俺に書く役には、いつも狂気の部分があるんですよ(笑)」
立ち稽古はハルキを中心とした諍いのシーンから始まった。物が散乱している室内で、激しい言葉を重ねる古田がいる。吉田はそれをいさめるでもなく諦観の様子。ひょうひょうと割って入る中山は、普通のようでどこか不気味な存在だ。多部扮するハルキの娘イラは、傍若無人な父親のふるまいに呆れ、思いもかけない行動に出る。古田の怪演に爆笑した後、多部の動きにあっと息を飲んだ。空気の切り替わりが激しいこのシーンを、長塚は多方向からじっと見つめて「じゃあ、もう一度」。四度は繰り返しただろうか。
「すぐに結果を求めず、じっくり確実に進めています。不協和音を抱える人たちのドラマだけれど、心地良く、美しい。長塚圭史の独特の世界をきっちりお見せしたいと思います」(吉田)
不穏だけれど心地良い。矛盾をはらんだ寓話から受けとめるものは、現実を知る覚悟かもしれない。
東京公演は12月6日(日)から30日(水)まで。その後、福岡・新潟・長野を巡演。
取材・文 上野紀子
■吉田鋼太郎 TV出演情報
12月4日(金)夜11:00〜 TBS「A−Studio」
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