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故・寺山修司生誕80年の今年、その最後の演出作品『レミング』が上演される。1979年に発表されて以来、さまざまなバージョンが存在する本作だが、今回は、寺山没後30年の2013年に松本雄吉と天野天街が台本化し、松本の演出で初演した舞台を、音楽劇『レミング〜世界の涯まで連れてって〜』として再演。溝端淳平、柄本時生、麿赤兒、霧矢大夢……とキャストを一新し、前回は登場しなかった“少女”役としてシンガーソングライターの青葉市子も出演する。上演場所をパルコ劇場から東京芸術劇場に移し、スケールアップが見込まれる稽古場に11月某日、潜入した。
この日は共同脚本の天野が中心となり、セクション5「もぐら叩き」の稽古が行われていた。下宿屋の一室に住むコック見習いのタロ(溝端)と、何故か畳の下に住む母親(麿)との場面だ。息子に干渉し、脅したり懐柔したりしながら自らの影響力の下に置こうとする母。その母をなだめながら、隙あらば布団叩きで殴ろうとする息子。母との関係に終生悩まされた寺山自身をも彷彿とさせる情景だ。背後から布団叩きを振り下ろす溝端の様子が麿には見えないため、打つタイミングと頭を引っ込めるタイミングをめぐり、試行錯誤が続けられた。回を重ねる毎に動きがよくなる溝端の瑞々しい演技と、ちょっとした表情や声に得も言われぬ味わいが滲む麿の怪演が印象的。さらに、何人もの“少女”たちのアンサンブルが現れ、幻想的な情景を創り出す。
続いて稽古はセクション2「壁の消失」の前半へ。どこか中華テイストの音が流れる中、タロとジロ(柄本)が並んで調理の仕草をし、中華料理の名を次々と掛け合いで発していく。途中でそれらは、包丁さばきの描写に変化。果てしない呪文のように、台詞は続く。しかも、台詞のテンポは音とリンクしていなければならない。難しさに頭を抱える溝端と柄本に、音楽の内橋和久が「慣れたら崩してもいいけど、お互いの台詞がどう絡んでいるのか把握するためにも、まずは音をハメて」「身体に入れちゃうと良いよ」とアドバイスする。柄本は「家でずっと練習しているんですけど……」と苦笑いし、溝端は「振りなしでやってみる?」などと積極的にアイデアを出しながら、練習に没頭。見守るキャストやスタッフも、思わず一緒に膝でカウントを取っていた。
休憩時間には、大女優・影山影子を演じる霧矢のかつらも到着し、スタッフが説明。その傍らには、振りを確認する占部房子や、TV「テラスハウス」の”王子”こと岩永達也らの姿も。本番に向けて、準備は休みなく進められているのだった。
この作品には、様々な壁が登場する。アパートの壁、舞台と客席の間の見えない壁、独房の壁……。それらの先に、虚構とも現実ともつかない不思議な景色が広がっていく。幾つもの壁を乗り越えてキャスト達が到達する新たな音楽劇『レミング〜世界の涯まで連れてって〜』の開幕は、まもなくだ。
公演は12月6日(日)から20日(日)まで東京芸術劇場プレイハウスにて、その後、愛知、大阪、福岡でも上演。
取材・文:高橋彩子
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