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フレンチロックやポップスに乗せて、18世紀末のフランス革命前夜や、その発端となったバスティーユ牢獄襲撃をリズミカルに描き、フランスで大ヒットしたミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』(以下『1789』)。昨年、宝塚歌劇団でも上演された話題作が、東宝版ミュージカルとして登場する。今作でマリー・アントワネットを、花總まりとWキャストで演じるのは、元宝塚歌劇団宙組トップスターの凰稀かなめ。宝塚退団後、『1789』が初舞台となる凰稀に話を聞いた。
かつて宝塚歌劇宙組公演の「ベルサイユのばら―オスカル編―」などで、オスカルを演じた凰稀。「もし、“ベルばら”のマリー・アントワネット役のオファーだったら、お断りしていました。でも、フランス版と宝塚版の『1789』を拝見して、このマリーは、ベルばらのように女性女性した人ではなく、現代的な人だと感じました。初めての“女性”を演じるには、とてもいい勉強になる役。不安もありますが楽しみな気持ちでいっぱいですね」
主人公の農夫ロナンをはじめとする革命に身を投じる民衆と、贅沢を極める王室。その対立と、革命に巻き込まれていく人々の出会いや恋愛がドラマティックに展開される。宝塚時代に、オスカルとして見ていたマリーと、今作で演じるマリーに違いはあるのだろうか。「ベルばらは漫画の世界を忠実に再現した作品。『1789』をご覧になったお客様は、王室よりも民衆の思いにより共感するのではないかと思います。マリーの贅沢な私生活や浪費、そして無神経な発言などに民衆はすごく怒り狂う。でも裕福な環境でしか育っていない彼女にとって、普通の生活とは何かがわからなかった。いつの間にか、そんなマリーをかばってしまう自分がいますね。これはベルばらではなかった感情です」
凰稀の役作りはすでに始まっている。「マリーと会話をしたり、自問自答したりすることで役との距離を縮めていく。最近、彼女が降りてきたような気がして。朝が来るのが怖いんですが、お昼近くになるとホッとするんです。多分、アントワネットが牢獄にいたときの感覚なんだと思います。私、妄想族なんですよ(笑)」。宝塚時代に、長年投獄されたモンテ・クリスト伯を演じたときは、自宅の部屋を牢獄のようにし、暗闇の中で生活したという。そんなストイックさをどの役でも貫いてきた。約17年間、男役として生き、発声や歩き方、しぐさなどすべてを女性に戻す今は、「本当に大変で、スカートをはくだけで恥ずかしい」と笑う。新たな王妃の誕生に期待したい。
公演は、4月9日(土)から5月15日(日)まで東京・帝国劇場、5月21日(土)から6月5日(日)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて上演される。チケットは発売中。
取材・文:米満ゆうこ
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