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演 劇
退屈な大学生活を送っていた青年が「娼夫」となり、さまざまな女性の欲望を受け止め、彼女たちの心を解放し、自身も成長していく──。そんな衝撃的な石田衣良の小説『娼年』と『逝年』が、舞台化される。脚本・演出を手がけるのは、三浦大輔。主人公を松坂桃李が、ボーイズクラブのオーナーを高岡早紀が演じる。この顔ぶれで、何を生み出そうとしているのだろう。
これまでも性的なテーマを追求し、人間の欲情をリアルに描いてきた三浦。『娼年』の舞台化は、「それを限界まで突き詰めるという挑戦になりそう」だと語る。「セックスで何が浮かび上がってくるかというところが原作のテーマで、本当にセックスだけに焦点を当てているので、それを生身で見せる舞台でどう表現するのか。この作品でやり切ることで、締めくくりにできるんじゃないかと思ってるんです。またそこまでたどり着かないとこの原作をやる意味はないと思うんですね」。
三浦のそんな覚悟を知って、「今、思わずうれしくなっちゃいました(笑)」と喜びの声をあげる松坂。三浦の「セクシュアルなイメージがない松坂くんだからこそ、普通の青年が様々な欲望に触れ、変わっていく姿が表現できる」という期待に応えて、大胆なセックス描写にも果敢に挑もうとしている。「今まで触れたことのない色の作品ですから、このチャンスを逃したくないと思いましたし。R―15指定がついたと聞いたときも、それぐらいじゃないと表現として攻められないだろうなと覚悟しました」。
そして、松坂演じる主人公を、娼夫の世界へ導く役どころを演じる高岡。三浦曰く「男性にとっての理想の女性像」でもあるが、「男性を売ることを仕事にするなんて、これほど理解不能な役をいただいたことはなかったかもしれません(笑)。でも、誰かを演じるというのは、共感できるから面白いということでもないですし、怖いけど、楽しみです。性の表現もそうですけど、それぞれの人間が隠し持っている何かが、きっと見えてくるんでしょうから」と穏やかに燃えている。
おそらく、舞台で生々しい描写をする初めての作品になる。しかし、「触れ合うことによってにじみ出てくるやさしさみたいなものが見えれば」と松坂が言うように、そこに浮かぶのはやはり人間の思いになるだろう。「肌と肌の接触を目の当たりして、その温かさやあふれる欲望を、理屈じゃなく体感してほしい。それは演劇のひとつの可能性だと思っています」と三浦も力強く語る。まさに体と心に残る体験ができるかもしれない。
東京公演は8月26日(金)から9月4日(日)まで東京芸術劇場 プレイハウスにて。チケットの一般発売は6月11日(土)午前10時より。チケットぴあではインターネット先行抽選を実施中、5月29日(日)午後11時59分まで受付。」
取材・文:大内弓子
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