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1998年の初舞台以来、数々の名演を残し『桜華に舞え』『ロマンス!!』で宝塚歌劇団を退団する星組トップスター・北翔海莉(ほくしょう・かいり)。稀代の実力派エンターテイナーがラストステージに挑む心境を本人に聞いた。
「この作品に出合うために宝塚歌劇団に入ったのだと思える台本でした」。北翔が語ると重みがある。明治維新の立役者のひとりで、西郷隆盛と共に西南戦争へと身を投じた薩摩藩士、桐野利秋の生き様を描く『桜華に舞え』。演出家・齋藤吉正が、入団時の試験で提出した作品がベースだという。「愛する者のために命を賭ける精神や忠誠心、義などがテーマで、私が一番演じたいと思うような役でした」。“人斬り半次郎”という異名を持つ剣豪でありながら、「敵にも立派な侍だったと敬意を払う愛情深さがあった。それらをしっかり立ち回りでも表現したい」と話す。
稽古開始前に2日間鹿児島へ行き、桐野と同じ示現流(じげんりゅう)の道場で学んだ。「相手のエリアに瞬時に入り逃げ場なく追い詰めるという流派で、正直驚きました。精神統一のために笛を吹いて自分をコントロールするそう。それでいて心の広さがあるのが薩摩隼人だと知ることができ良かったです」。飽くなき探究心を持つ北翔。「本物を分かったうえでの宝塚バージョンをやらないと!」と頼もしい。
同時に退団するトップ娘役・妃海風(ひなみ・ふう)は、敵対する会津藩の娘・大谷吹優役。彼女の父を殺めてしまった桐野は、記憶喪失を患い彼を慕う彼女を前に苦悩する。「最終的に心と心で繋がる関係は、ふうちゃん(妃海)とでなければできない芝居です」。侍の言葉で好きなのは“最も愛あるものは最も勇気あるもの”。「それが今回自分が見せたい全てかな。守るもの未来に託すもの、色んなものを全部自分の中に受け入れて次に命を引き継ぐという…」。サムライ魂が“北翔魂”に重なる。約1年半の星組トップ在任だったが、海外ミュージカルやオペレッタを元にしたミュージカルへの挑戦など凝縮された時間だった。「星組生はみんな柔軟性があり、難しくても挑戦すれば結果が出るということを分かってくれた。日々の成長を感じ、私の方が支えてもらいました」としみじみ話す。
岡田敬二が手掛けるロマンチック・レビュー・シリーズ第19作品目『ロマンス!!』では「アメ車の前で英語でポップスを歌うとか、『イル・モンド』の壮大なデュエットなど私ならではというものを用意してくれました」と。卒業だからとしめっぽい演出は好きではない。「先生も私の性格をよく分かっているから、全部が潔いいんです!」と朗らかに笑う。宝塚人生を振り返ると「1%だけの可能性みたいな状況の時にこそ奇跡が起こる。試練や壁はもう忘れたけど(笑)、それ以上の宝物を見つけられました」。常に前だけを向いている北翔が男役としてどんな有終の美を見せてくれるか楽しみだ。
公演は兵庫・宝塚大劇場にて8月26日(金)から10月3日(月)まで。チケット発売中。東京公演は10月21日(金)から11月20日(日)まで。9月18日(日)より一般発売開始。
取材・文:小野寺亜紀
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