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自身が主宰する劇団「ペンギンプルペイルパイルズ」以外にも多彩な作品を手掛け、今春上演されたいのうえ歌舞伎「乱鶯」の脚本も話題となった倉持裕の新作は、松重豊演じる大道寺尚親という男とその風変わりな家族を長きに渡り描いたコメディ「家族の基礎〜大道寺家の人々〜」。倉持と、尚親の妻でふたりの子(林遣都、夏帆)の母である須真役の鈴木京香に話を聞いた。
作者の倉持曰く、須真は「家族を持ったことによって夢をあきらめさせられてしまった女性」。売り出し中の女優だった頃に尚親と出会った須真は、女優への未練を残し不本意なまま家庭に入る。
「そのモヤモヤをずっと持ちつつも子育てを頑張り、家庭の問題を解決していかなきゃと思っている。腹にイチモツ抱えながらも一生懸命やろうとしている女性です。いいお母さん? そう見えるかどうかは、見る人の立場によるかもしれない。でも本人は良かれと思っていろんな選択をしているから、全く善良だと思います。そういう意味では、この家族はみんな善良です(笑)」(倉持)
尚親は両親に放任されて育ち、そこから来る“家庭”への憧れが、須真ら家族を翻弄する要因でもある。わずかなシーンだが半ズボン姿の松重が見られる少年時代は、尚親の母親役も鈴木が演じる。
「それがまた楽しみなんです! いろんなことをやれる方が楽しいから。長い時間経過があるこの作品のように、いろんな時代の女性を自分ひとりで演じることができるのも楽しいし、成長して変わっていく過程を見せられるのもやりがいがありそう。私にとっては、ひとつのところを集中して見せていく方が、もしかすると困難かもしれません。一面しか見せないというのはやっぱりつまらないし、掘り下げ方を深くしていかないと、その人物が軽くなってしまいそうで怖いんですね」(鈴木)
その“善良”さで須真ら家族を翻弄する尚親役の松重とは映像で何度か共演しており、夫婦役の経験もある。
「私がストーキングされる役なんかもあったんですけど、めちゃくちゃ目立っていたりして(笑)。以前から松重さんの舞台を観ていましたし、私は大ファンでもあります。最近ご一緒したドラマでも夫婦役で、撮影の休憩時間にもこの舞台の話をよくしていました。稽古に入る前の段階から私たち夫婦は(笑)、ものすごく心待ちにしている作品なんです」(鈴木)
尚親が追い求める“家族”は、約50年に渡る長い旅路の果てにどんな終着を見せるのか。客席で見届けたい。舞台『家族の基礎〜大道寺家の人々〜』は9月6日(火)から28日(水)まで東京・シアターコクーンにて。その後、愛知、大阪、静岡を巡演。
取材・文/武田吏都
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