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トム・フォードは、本物の映画監督だ。監督2作目『Nocturnal Animals』の、トロントでのプレスおよび業界向け試写上映後、会場に沸いた大拍手が、それを証明した。
監督デビュー作『シングルマン』から7年を経ての新作。夫との関係がぎくしゃくしているスーザン(エイミー・アダムス)のもとに、長年、音信がなかった最初の夫トニー(ジェイク・ギレンホール)から、彼が書き終えたばかりという小説の原稿が届く。最初のページには「スーザンへ」と書かれてあり、タイトルも、彼女と彼が過ごした時期のことにちなんだものだ。しかし、内容は、ライターとしての成功を目指していた当時の彼が書いていたのとは似ても似つかない、残酷なものだった。取り憑かれたように読み進めるうちに、スーザンの心は、不安に包まれていく。同時に、昔、自分が彼に対して取った行動への罪悪感にも責め立てられるのだった。
映画は、小説のストーリーと行き来しつつ展開。ギレンホールは、トニーと、小説の中の主人公の、ひとり二役を演じる。小説の部分は、スーザンを不安に陥れるというのが十分納得できる、緊張感に満ちたものだ。その結果、映画全体もスリルたっぷりになっているが、奥にあるのは、人間の心理についての物語なのだ。
スーザンがアート業界の仕事をしているという設定のため、映画の冒頭のほうではユニークで目を引く映像が登場するが、『シングルマン』もそうだったように、ファッションデザイナーが作る映画にしては、ビジュアルへのこだわりをうるさく前面に押し出してはこない。アートなんて実はどうでもいいものだ、などという、やや自虐的なせりふなどに、さりげないユーモアも見られる。ほかと違い、さらに自分の1作目とも違う新作を生み出してみせたフォードの、今後の映画監督としてのキャリアが、ますます楽しみになった。
取材・文・写真:猿渡由紀
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