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日本文学の名作を人気声優が読むドラマリーディング第2弾『三四郎/門』が11月30日、TOKYO FMホールで開幕した。2016年3月に上演された第1弾『それから』とあわせて、夏目漱石の前期三部作と呼ばれる『三四郎』と『門』をひとつの作品にまとめて上演するという実験的な試みだ。構成・演出は前作同様、深作健太が担当し、上演回ごとに異なる男性2名、女性2名の声優が登壇する。
舞台の構成はシンプルだ。4脚の黒い椅子とマイクが横一列に並び、その背後には左右に1枚ずつ、大きな幕が垂れている。会場には「カチカチ…」と秒を刻む時計の音が響き、開演までのあいだ、時の経過を観客に報らせ続けている。これから始まるふたつの物語はともに“時の経過”も大きな要素のひとつと考えると、あるいはメタファーとしての意味合いがあるのかもしれない。
そんなことを思っているうちに時計の音は止み、4名の声優が静かに舞台へと登場した。上手には白い衣装をまとった男女のペア、下手には黒い衣装をまとった男女のペアが腰掛け、物語は『三四郎』から始まった。
上手に座るふたりが、熊本から鉄道に乗って上京する三四郎の様子を丁寧に朗読していく。物語部分は聞きやすい音で淡々と、セリフ部分は登場人物の表情さえも再現しているかのようなリアルさで、情感を込めて読み進めていく。文字で読むとイメージしにくい当時の文化や感性も、声優の巧みな表現力によって、スッと頭に入ってくる。
三四郎が車中で出会った女と名古屋で別れる際の印象的なセリフで、物語は下手に座るふたりが朗読する『門』へと受け渡される。秋日和に縁側でくつろぐ宗助が妻の御米と言葉を交わす、なんてことのない日常の情景を、独特な間や抑揚で表現する声優ののびやかな芝居に、わずかに高まりつつあった先ほどの『三四郎』の緊張がふっとやわらぐ。
その後も決定的なセリフやシーンをトリガーとして転換し、パラレルに進んでいく『三四郎』と『門』は、それぞれに周囲を巻き込み、次第に核心へと突き進んでいく。登場人物が増え、物語のスピードが増す中盤以降、観客の頭の中は忙しく回転することになるのだが、効果的に挿入される音や照明の演出と、ひとりで複数役を担当する声優たちの鮮やかな演じ分けの助けもあって、原作が未読でも混乱することなく理解できる構成となっている。
夏目漱石が描いた明治末期に生きる二組の男女──迷羊(ストレイ・シープ)たちの移ろいを、その目の前でじっと息を潜めて見守っているかのような、密やかな高揚をおぼえる珠玉の90分、ぜひ体験してほしい。
本公演は残すところ12月8日(木)と12月9日(金)の2回のみ。両日とも東京・TOKYO FMホールにて。チケット販売中。
取材・文:とみたまい
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