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赤堀雅秋作・演出の舞台『世界』が1月11日(水)、東京・シアターコクーンで幕を開ける。同劇場では第3弾となる今作で、赤堀が目指すのは、市井の人々の暮らしから、この“世界”のあり様を見せることだ。自身の劇団や映画で追求してきた繊細で生々しい空気感が、シアターコクーンという空間にどう立ち上がるのか。稽古も仕上げに入っている赤堀に聞いた。
物語は、とある地方都市で町工場を営む家族の父親がその妻から突然離婚届を突きつけられたところから始まる。大きな事件が起こるわけではないが、夫婦の離婚問題を軸に家族とその町の人々の事情がじわじわと見えてくる。
「シアターコクーンにおいて、これほどどうでもいい台詞が羅列していることは、史上初めてじゃないかと思うんですけど(笑)。それぐらい今回の作品は、市井の人々の卑近な描写の連続になっていて。そこから何か、今の世界の空気とか、漂う雰囲気みたいなものが透けて見える作品になればいいなと目論んでいるんです。もちろん、劇作家や演出家は、現在の空気をどう掴み取ってどう表出するかということが仕事だと思うので、何も特別なことではないんですが。ただ、些細なドラマを丁寧に紡いでいくことが自分の作家性だと思うので、今回はそこに地に足を着けて取り組んでいきたいと思っているんです」。
登場するのもまさに卑近な人物たちだ。風間杜夫が演じる父親は「終始最低な男」。大倉孝二が演じる息子は、「ずるくてだらしないしおれた中年」。早乙女太一が演じる従業員は「ゲスな若者」で、これが初舞台の広瀬アリスが演じるのは「無自覚な悪意を持つ風俗嬢」である。「舞台でも映像でも、僕が役者さんに求めるのは、本当にその人物として佇んでもらいたいということだけ」という赤堀の演出のもと、いずれの役者も、赤堀の世界でしか出せない感情を見せることになるだろう。
タイトルの『世界』は、「大仰でバカバカしい感じが面白いと思ってつけた」のだと赤堀は言う。「自分の根っこが高尚ではないので高尚なものは描けない。コアな演劇ファンというよりは、地元の友人とか、演劇的素養のない人に向けて、どういう想像力が喚起できるかっていうことが、自分のやるべきことじゃないかと思っているんです。むしろ、そういう人に届かなかったら作ってる意味がないんじゃないかなと」。高みからは見えない世界を描く。赤堀のそんな強みが全開する舞台になるはずだ。
公演は1月11日(水)から28日(土)まで東京・Bunkamuraシアターコクーンにて上演後、2月4日(土)・5日(日)に大阪・森ノ宮ピロティホールでも上演する。チケットは発売中。
取材・文:大内弓子
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