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演 劇
佐藤アツヒロ主演の舞台『さくら色 オカンの嫁入り』が1月20日(金)のプレビュー公演を皮切りに2月に大阪・東京にて開幕する。その稽古場に潜入した。
原作は、第3回日本ラブストーリー大賞ニフティ/ココログ賞を受賞した咲乃月音の同名小説。2010年の初演から4度目の上演で、今回の公演中に公演回数100回を達成する人気作となった。
物語の舞台は大阪の下町。ある晩、酔ったオカン(母親/熊谷真実)が若い男を“拾って”きて「オカンな、この人と、結婚しよ思うてんねん」と娘・月子(荘田由紀)に伝えることから始まる。“捨て男”として拾われた研二(佐藤アツヒロ)はその日からオカンと月子の暮らす家に住み、祖父(島田順司)に教わったという美味しい食事を作るようになるが、男性にトラウマを持つ月子は拒絶し、心を閉ざす。そんな毎日の中で、オカンと月子、愛犬・ハチ(溝口琢矢)、隣に住む大家・サク婆(正司花江)の日常が静かに変わり始める――。
稽古がスタートしてまだ1週間ほどであったが、既に通し稽古が行われていた。稽古が始まる前にはキャスト陣が和やかにおしゃべりをしながらストレッチをしていて、まるでオカンと月子の家のちゃぶ台を囲んでいるかのよう。正司が荘田の食事を気にかけるなど役柄同様のやり取りが行われ、キャスト達が作品に馴染んでいるのが伝わってきた。また、稽古の合間には関西弁のチェックも。キャスト達は方言指導の先生に何度もイントネーションを確認し、役作りに取り組む。
本作には、自分の親切がもとで起きた事件がトラウマで外出恐怖症になった月子の苦しみや、祖父が自分の友人に騙され責任を感じ続けている研二の葛藤、さらに認知症やガンという病気、たったひとりの家族の死など、現代を生きる私たちのすぐそばにある出来事が数多く描かれている。その出来事を「不幸」として描くのではなく、周りの人たちの温もりの中でゆっくりと前を向いて歩き出すまでの姿を丁寧にみせていた。登場人物たちはいつも誰かのことを想っていて、それがなかなか伝わらなくても諦めない。人に当たったりしながらも相手と向き合う姿は、人と人とのつながりや会話をすること、待つことや時間をかけることの大切さなどを思い出させる。それを押しつけがましくなく感じられたのは、キャスト達から生まれる温かな空気もひとつの理由のように感じた。
1月20日(金)に埼玉・志木市民会館パルシティでプレビュー公演。その後、2月2日(木)に大阪・すばるホール、2月8日(水)から15日(水)まで東京・銀座 博品館劇場にて上演。
取材・文:中川實穗
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