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市井の人々の心情を丁寧にすくいとる会話劇から出発し、近年では大型プロデュース公演の脚本や、シェイクスピア作品の演出でも高い評価を得ている劇作家・演出家の青木豪。そんな彼が、7年ぶりに自らの書き下ろし作を演出するのが、東京の下町を舞台に展開する『エジソン最後の発明』だ。主役の瀬奈じゅんは元宝塚トップスターにして、現在はミュージカルをメインに活躍中。一見意外な組み合わせにも思えるが、宝塚時代から繊細な表現力に定評があった瀬奈だけに、青木との化学反応には注目だ。2人に本作への想いを聞いた。
下町にある工場の社長(小野武彦)は、近所から“エジソンさん”と呼ばれるほどの発明好き。ところが2年前に妻を亡くしてから、仕事はどこか上の空だ。人気パーソナリティとしてラジオ局で働く娘(瀬奈)や、娘の恋人(東山義久)は心配するが、ある日、その新たな発明が判明する。それはなんと、発明王エジソンが最後に取り組んでいたという“死者と話す通信機器”! 下町の“エジソンさん”の珍発明は、口やかましい近所の人々をも巻き込んで……!?
おかしくて少し切なく、最後に心がじんわりと温かくなるのが青木作品の魅力。本領発揮になりそうな本作の着想について、「僕は当て書きしか出来ないので、瀬奈さんと東山さんと3人で食事会をした時の印象をもとに書きました」と言う青木。一方の瀬奈は、「青木さんは心の底を見透かすような瞳をお持ちなので、最初は緊張しました」と笑いながらも、次第に「格好つけてもバレるだろうから、素のままでいいや」と覚悟を決めたとか。結果、青木が「これまで瀬奈さんが出演されたいくつかのストレートプレイより、さらに“普通の”というか、市井の人々の物語がいいな」(青木)と感じたことから役どころが決定。実際にラジオ好きという瀬奈は、「本当の私も庶民派。等身大の役に挑戦できるのが嬉しいです」と笑顔で語ってくれた。
さて、東京公演の会場となるシアタートラムは、客席数約220の小劇場。舞台構造の良さと客席との距離感の近さで、これまで数多の名優がその舞台に立ってきた。瀬奈にとっては久々の小劇場となるだけに「役者の内面がそのまま出てしまいそうで怖い」と話すが、「大きい役(大きな劇場での華やかな役どころ)が出来る人は、小さい役(小劇場での市井の人の役)も出来るから大丈夫」と青木が声をかけると、思わずホッとした表情に。その後も瀬奈と青木との間で芝居に関する様々なやりとりが行われるなど、早くも本番への熱意が垣間見られた2人。「ミュージカルとかストレートプレイとか関係なく、今はすごく“お芝居”がしたいんです」という瀬奈の言葉に、本番への期待がいっそう高まる取材となった。
公演は4月2日(日)より23日(日)まで東京・シアタートラムにて。その後、愛知、大阪でも上演。チケットの一般発売は2月11日(土・祝)午前10時より。
取材・文 佐藤さくら
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