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ティム・バートン監督の傑作映画をミュージカル化した舞台『ビッグ・フィッシュ』が2月7日、東京・日生劇場で開幕した。2013年にブロードウェイで大ヒットした作品で、日本では今回が初上演。前日の6日には、川平慈英、浦井健治ら出演者が意気込みを語るとともに、最終舞台稽古が報道陣に公開された。
自らの体験談を現実にはありえないほど大げさに盛って語る父親エドワードと、その奇想天外な話を聞いて育った息子ウィル。ウィルは大人になるにつれ父の話が作り話にしか思えなくなり、父子の間には隙間が生まれてしまうのだが……。少しすれ違ってしまっているけれど解りあいたい父と息子のもどかしい現実と、エドワードが語る奇想天外な物語――子どもの頃、魔女に死の様子を予言された話、巨人との友情、サーカスで最愛の女性と出会った話などなど――、イマジネーションの世界とリアルな家族の物語が交互に語られ、めくるめく世界に観客を誘う。その行き来を違和感なく描き出す力があるミュージカルという手法、そして実力派揃いのキャスト陣がしっかりと家族の絆を表現することで、ティム・バートン監督映画に負けない、ファンタジックで心あたたまる素敵な作品が誕生した。
中でもやはり主演の川平慈英が、エドワードそのものといった魅力を振りまいている。大ボラのような物語をくしゃくしゃの笑顔で得意げに話す姿はチャーミングで、その憎めなさに、いつの間にか観客も彼を好きになってしまうに違いない。現実的な息子・ウィルを演じる浦井健治も、生来の純真さと優しさがそこかしこから溢れていて魅力的。またエドワードの妻・サンドラ役の霧矢大夢はアメリカ娘らしいキュートな少女時代から、病を得た夫を優しく見守る晩年までを見事に演じ、ウィルに寄り添う妻・ジョセフィーンの赤根那奈の聡明さも、家族をしっかり支えている。さらに少年時代のウィルを演じる鈴木福(りょうたとWキャスト)がその愛らしさと純粋さで、家族愛の基盤を強く築いた。ほかにもエドワードの語る物語の登場人物に扮する藤井隆、ROLLY、J Kim、深水元基、鈴木蘭々らが個性的かつ魅力的な不思議なキャラクターになり、夢のような世界を紡ぐ。視覚的にも美しく、見ごたえのある舞台作品だ。
会見で川平が「思っていた以上にゴージャスな舞台になりました。申し訳ないのですがお客さんよりも僕が一番楽しんじゃおうかなという気分。楽しんでいる僕たちを見て、お客さんの心が温まってくれれば、こんな嬉しいことはない」と語ったが、その言葉どおり、舞台上から幸せな空気が客席に流れこみ、劇場空間全体を、ポジティブで温かい空気が包む。「劇場に来て、座席に座ってくだされば、この『ビッグ・フィッシュ』チームが幸せに誘います」と川平。寒い2月、ぜひ『ビック・フィッシュ』で優しく温かい気持ちになってみては。
公演は2017年2月28日(火)まで同劇場にて。チケットは発売中。
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