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フランスの劇作家ジャン・ラシーヌがギリシャ神話から着想して創った戯曲『フェードル』。1677年に初演され、「人間精神を扱った最高傑作」と評されている。骨太の古典悲劇だが、ストーリーはわかりやすい。不倫、嫉妬、冤罪と、今にも通じるドロドロ感満載で、生々しい女の業をとことん描く。
今回、平岳大が演じるのは、フェードルの義理の息子イッポリット。愛する女性アリシーがいるのに、義理の母のフェードルに恋心を抱かれてしまい、拒絶したことで冤罪の汚名を着せられる。
「脚本の印象では純粋でまっすぐな男。若い男という設定でしょうが、42歳の僕がどう演じるのか。アリシー(門脇麦)に愛を告白するシーンでは、まだドキドキできるか心配です。フェードルを演じる大竹(しのぶ)さんを無下にするのも度胸が試されますね(笑)」
平は役者を始めた頃から、フェードルはやってみたい作品だったという。
「念願でしたが、まさかこの年齢でイッポリットとは、想像もしませんでした。本や朗読劇、映画では触れてきましたが、改めて脚本を読むと、手強い作品です。とにかく台詞が長いし、ここまで長台詞で言い合いするのも初めて。それも緻密な会話劇ではなく、ごつごつしたパワーの塊がぶつかり合う感じ。ラシーヌの脚本でありながら、王道のギリシャ悲劇らしい骨太さが味わえます。日常からは遠い話である分、等身大のリアリティだけでは成立しない。自分の枠を広げて、どこまで大きく演じられるか、新たな挑戦ですね」
『フェードル』にかける平の思いは強く、公演半年前に、すでに台詞を覚えていた。
「怖いんですよ。多分、『フェードル』は今までの役者人生の経験全てをぶつけても、足りない。そのぐらい大変な作品です。全力を出し切って、台詞ひとつひとつを体に入れて向き合わないと。台詞はまず小さな手帳に書き写して、それを見ながら電車の中やランニング中にぶつぶつ言って覚えています」
こういったギリシャ悲劇やシェイクスピアのような作品は、父・平幹二朗が得意だったが、意識することはあるのだろうか。
「真似ていると言われたくないなぁ(笑)。絶対に似ていると言われるでしょ? もちろんご覧になる方が楽しんでいただければ、それも嬉しいことなのですが。確かに僕は長年、父の舞台を観てきたので、自分の中に無意識に影響を受けている部分があると思います。でも安易にそれを頼らず、自分ならではの今の時代のギリシャ悲劇、スケールの大きさの表現に取り組みたいです」
公演は4月8日(土)から30日(日)まで東京・シアターコクーンにて。その後、新潟、愛知、兵庫を巡演。
取材・文/三浦真紀
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