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演 劇

3月2日、ぴあ株式会社と舞台芸術集団地下空港による共同公演『サファリング・ザ・ナイト』の幕が開いた。<移動参加型演劇>と銘打ち、観客はいくつかのグループに分かれ、会場内を移動しながら物語の世界に入り込む。CoRich舞台芸術まつり!2016春にて準グランプリ&制作賞をW受賞した実力派、地下空港がおくる、新時代の演劇体験だ。
物語の舞台は、2045年の近未来。世界は、オベロンとタイタニアというふたつの巨大AI(人工知能)企業体に支配されつつあった。そのふたつのAIが統合することになるが、それは人間にとっての幸福、もしくは不幸の始まりでもあった……。シェイクスピアの喜劇『夏の夜の夢』を下敷きに、人工知能が成熟した世界での、人間の幸せについて観客とともに考える。
大きな魅力は、人によって体験する物語がまったく違うことだ。まず観客はチケット購入段階で<オベロンゲート>と<タイタニアゲート>を選択することになり、別の会場に入る。その後グループに分かれ特設会場内を移動するが、そのグループごとに移動ルートが異なるのだ。屋外、ビル内、非常階段……行く先々で、様々な人と出会う。終演後、観客同士で「そっちのグループはどこに行った?」「えっ、そのエピソード知らない!」と盛り上がる姿が見られた。
さらに、今作は<参加型>である。参加者は2045年の住人として、ある試験を受けなければならない。サイリウムのブレスレットを身に着け、登場人物のひとりとなる。時には作品世界の人物から質問を受け、会話をすることもある。
また、移動中はスマートフォンを用いる。事前に専用のアプリをダウンロードし、移動しながらQRコードを読み込んだり、メッセージを受信したりする。もちろんスマートフォンがなくても楽しめるようになっている。しかし、ふだん使っている自分の携帯電話が作品世界と繋がっていると、まるで本当にAIが氾濫した近未来の登場人物になったような感覚になる。
まるでSF映画やゲームのようだ。AIをテーマにし、スマートフォンやプロジェクションマッピングを使い、衣装も近未来的。しかしゲームなどと違い、総勢30名をこえる役者たちがナマの感覚を与える。彼らの息づかいが、そこはヴァーチャルリアリティの空間ではなく生きた人間の世界なのだ、と実感させてくれる。
上演時間2時間15分。参加者はその世界に住むひとりとして、一夜を過ごす。それはシェイクスピアの『夏の夜の夢』のように、ある夜の夢のような不思議な感覚を残すだろう。
公演は3月12日(日)まで、東京墨田区のすみだパークスタジオ特設会場にて。チケットは各公演の前日までぴあで発売中。
取材・文:河野桃子
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