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新国立劇場が、日本の演劇界に大きな影響を与えた海外戯曲を新訳で上演するシリーズ企画「JAPAN MEETS…−現代劇の系譜をひもとく−」第12弾として、ジョン・オズボーンの1956年の名作『怒りをこめてふり返れ』が7月に上演される。これに先立ち4月2日、スペシャルトークベントが開催され、新訳を担当した水谷八也、演出の千葉哲也、主演の中村倫也が出席した。
下層階級出身の主人公・ジミーが、政治や宗教などあらゆる旧世代の価値観、秩序への怒りをぶちまけるさまを描き、当時、世界中に“怒れる若者たち”を生み出す原点になったと言われる本作。新訳を担当した水谷は、当時の英国演劇界ではノエル・カワードやテレンス・ラティガンらが上流階級(中産階級の上の方)の社会を描いていたのに対し、オズボーンの登場がいかにセンセーショナルであったかを指摘。本作は「労働者階級の少し上、中産階級の下の方の視点で描かれている」と解説。大英帝国が傾いていく社会状況に触れつつ、そこで真新しい己の基盤を模索する姿は、戦後の矛盾が一挙に噴き出た今の日本でこそ眩しい、とも。
千葉は「最近、先を見据え、“ビジョンを持って生きる”ということが増えているように感じるけど、大事なのは“いま”自分がいるところ、自分を見つめ直すことなんじゃないか? そう考えるとこの作品はわかる。“自分を見つめる”というところから出発している」と語り、水谷も千葉の言葉にうなずきつつ、ジミーは過去や未来じゃなく、流れゆく時間の「現在」に常に立ち続けようとした純な奴なんだと思う、と語る。
そのジミーを演じる中村は、膨大なセリフ――言葉の限りを尽くした“怒り”に「戯曲を読みながら、なんでずっと喋ってんだ? 黙れ!って思いました(笑)」と半ばあきれつつ、「僕自身、自分という生き物がわからないということが、役者をやるモチベーションになってる。この人はずっと言葉を紡いでるけど、その裏には『何がしたいのか?』『何を変化させたいのか?』という衝動が腐るほどある。言葉をぶつけて、返ってくる何かで自分を知ろうとしてるんじゃないかと思います」と読み解く。
時代を超えて支持されながらも、決して「わかりやすい」とは言えない本作だが、千葉は「最近、わかりやすいもの、理解されやすいものが増えすぎてる。せっかくお金を払って見に来ていただくのだから『せめてわかりやすく』ではなく、『見たことのないものを作ろう!』としたい」と意欲を口にする。
中村はジミーについて「決して粗野ではなく、捻じ曲がった愛を持ちつつ、本当はいいやつなんじゃないかと思います。それがどう舞台上で現れるのか? これから稽古で探っていきたい」と語り「人間ドラマとしてしっかり作ることで、2017年の日本の僕らが楽しめる作品になると思う」と自信をうかがわせた。
舞台『怒りをこめてふり返れ』は東京・新国立劇場 小劇場にて7月12日(水)より上演。
撮影・取材・文:黒豆直樹
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