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アミューズ若手アーティストによるオリジナルミュージカルプロジェクト『オーバーリング・ギフト』が開幕。俳優の風間由次郎が作・演出を手掛けた作品だ。音楽は、3ピース・ピアノバンド「WEAVER」の杉本雄治。公演に先駆けて行われたゲネプロの模様をお届けする。
時代は近未来。舞台上手に巨大な壁があり、“リング”を持つ者達=「オーバー」が暮らす豊かな土地と、持たざる者達=「ロスト」が住む地域とを隔てている。リングとは、生まれてまもなく首につけられるもので、それが様々な才能の有無を表す。扉のようになった壁の開閉により、オーバーとロストの世界が表される。
裕福な家庭に生まれ、“統率のリング”を輝かせている若者アスター(猪塚健太)はある日、追っ手に殺されそうになっているロストの若者トトイ(溝口琢矢)の命と引き換えに、自らのリングを外して追っ手に渡す。リングは一度外したら二度とつけることができないのだが、案じるトトイをよそに、アスターは「リングを外しても何も変わらない」と笑顔を見せる。しかしリングを失ったアスターは家を閉め出され、失意のうちにロストの世界へ。そこで彼を待ち受けていたのは、アスターにただならぬ恩義を感じるトトイと、情愛深いその父ミロコ(加藤潤一)、孤児だがミロコの娘同然に育てられているルージュ(島ゆいか)らが築く、温かい家庭だった。アスターはまた、ミロコの古い友人で、リングは持っていないが壁の向こうに向かって美しい歌声を響かせる咲耶(中村百花)とも知り合う。しかし、病気の父を助けるため自らのリングを売ろうとするカゲツ(富田健太郎)とオーバーの市長イラッシュ(風間)の登場により、彼らの運命は大きく動き出す……。
一見、非現実的にも思える不思議でファンタジックな物語設定。しかし、ここで描かれるリングや壁は、現代の様々なものに置き換え可能だ。豊かさ/貧しさの本質とは何か、境界線や障壁はどう越え得るのか? 思索的・示唆的な風間の世界を、杉本のメロディアスな音楽が彩る。
開演前の挨拶では、自らが温めてきた企画の実現を前に、並々ならぬ緊張を滲ませた風間だが、終演後の会見では少しほっとした表情で「初めて手がけた作品がどう皆様に広がって行くか。観に来てくださった方に、僕と同様、一歩を踏み出す人に勇気を与えられたら嬉しいですし、厳しいことも言ってもらいたい」と、目を輝かせながら語った。猪塚は「由次郎の女房役のようなつもりで関わりましたが、キャスト全員がその思いを感じてくれ、スタッフが支えてくれて、一丸となったパワーある作品になったと思う」と手応えを感じている様子。杉本は「このミュージカルの醍醐味はキャストの声がどんどん重なっていくところ。希望に向かって皆が前に突き進んでいくエンディングは、人々に勇気を与えてくれるのではないか」と述べた。
公演は6月25日(日)まで東京・DDD AOYAMA CROSS THEATERにて。
取材・文:高橋彩子
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