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1930年代の中国・上海を舞台に、激動の時代に秘められた恋と人間模様をマキノノゾミが描き出すオリジナル音楽劇『魔都夜曲』。7月7日(金)の東京公演初日を約3週間後に控えた稽古場を訪れると、演出を手がける河原雅彦のもと、主演の藤木直人らキャストが丁寧な稽古を繰り広げていた。
物語は、暴漢の代わりに警官に連行された主人公の日本人青年・白河清隆(藤木)と、中国人の兄妹・周志強(小西遼生)と周紅花(マイコ)の出会いから始まる。この日、稽古がつけられたのは3人が出会った直後の場面。清隆の住むアパートの応接室で、医師・西岡(村井國夫)から傷の手当てを受けるシーンだ。
日本政府の要人を父に持つ御曹司で遊学中の身でありながら、送金を全て遊興に使ってしまう清隆。そんな屈託のない奔放なキャラクターを、藤木は明るく豊かな表情と大きな動きで造形する。特に目付け役である外交官・籾田(山西惇)の説教に対して、自ら「ソファの背もたれを飛び越えて正座してみるとか?」と提案し実際にジャンプ。見事に着地してみせると、稽古場全体に和やかな笑いが。河原も「チャーミングですね」と笑顔でうなずいた。
細かな修正を重ねながらブラッシュアップを図る河原は、演出席を離れキャストの前で自ら演じてみせることも。こだわっていたのは、登場人物の感情や行動の“必然性”。「今の演技では芽衣(春風ひとみ)が上機嫌になる理由がわからない。相手を動かし感情に作用するにはどうしたらいいか考えると、おのずと取るべき動きの分量や大きさが決まってくる」と指示を投げかけ、キャストに最善策を探らせた。これにすぐさま反応したのが、兄妹役の小西とマイコ。2014年と2016年に上演された『ガラスの仮面』に出演し、同じチームで作品づくりに携わってきた2人は、本作でも息がぴったり。ベテラン勢の山西や村井もすかさず応戦すると、ぐっと魅力あるシーンに変化していく。
さらに歌唱シーンの稽古では、キャスト達が伸びやかな歌声を聞かせた。本作には列強の共同租界地であった異国情緒あふれる上海にふさわしく、唱歌やジャズなど多彩なナンバーが登場。バンドの生演奏が舞台に華を添えるという。やがて恋に落ちる清隆と紅花をはじめ、音楽がどのように人間模様を彩るのか、劇場で確かめよう。
東京公演は7月29日(土)までシアターコクーンにて上演。その後、8月5日(土)・6日(日)に愛知、8月9日(水)から13日(日)まで大阪に巡演する。チケット発売中。
取材・文:岡山朋代
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