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20世紀のイギリス人作家ヴァージニア・ウルフの代表作「オーランドー」が、白井晃の演出を得て日本初演される。ある晩目が覚めると女性になっていた貴族オーランドー。その姿のまま、16世紀から20世紀まで生き続け……。性も時代も超える主人公・オーランドーに多部未華子。ほか小日向文世ら全6名のキャストで、20役を演じ分ける。KAAT神奈川芸術劇場で連日行われている稽古を見学した。
この日行われていたのは、終盤の第五幕。エリザベス女王役・小日向の、山のようなシルエットのスカートがまず目を引く。その横には凛としつつも可憐な多部のオーランドー。ふたりを取り囲むように、椅子に腰掛けたコーラス(コロスと同義)の3人(戸次重幸、池田鉄洋、野間口徹)がいる。彼らに注目していると、少々面食らうことが起きた。朗々と語りを担っていたかと思えば、すっくと立ち上がり装置を機敏に袖に片付けたり、舞台上に並べるなどし始めたのだ。スタッフともみまごう働きっぷり。「なんで(裏方用の)黒い服着てないんだって感じでしょう?(笑)。コーラスの僕らがステージングの手助けをすることがこの作品の見どころのひとつなので、一歩一歩踏みしめて(小道具の)旗を立てますよ!」と戸次。この作品のコーラスは、それぞれ5役ほどこなしながら裏方的な働きもし、とにかく大忙し。今や売れっ子の3人の貴重な姿が見られる。シーンが進むとそこに小芝風花も加わり、華奢な体で装置を動かしていく。「私は前半はサーシャ(少年オーランドーの恋人)として出ています。すごく大変そうにしながらも、このお三方がひそひそ声で話していたりするのを見ると楽しそうで、早く加わりたくて。サーシャは難しくてまだよくわからないというのが本音ですが、こっちはめっちゃ楽しい!」と小芝。ちょっとドジでかわいい、コーラス三人衆の妹分といったところか。
この日の稽古ではラストシーンまで到達。稽古開始から2週間が経過し、全場面の演出がひととおりついた形に。「一巡目といったところですが、これまでわりと手探りだったのでホッとしました。いつもみたいに感情がぶわっと出る役でもないのに、今の段階でなんとなく面白さを感じていて。新鮮な気持ちを味わっています」と池田は言う。そして「白井さんは『とりあえず枠だけ決めました。ここからどうはみ出ます?』っていうのが好きな方。だからここからぶっ壊す作業ですよ」とは、白井との顔合わせが3度目の野間口による見解。いかようにも解釈や想像の膨らむ原作に乗っかり、白井版「オーランドー」は破壊と創生を繰り返す。
舞台『オーランドー』は9月23日(土・祝)から10月9日(月・祝)まで、神奈川・KAAT 神奈川芸術劇場 ホールにて。その後長野、兵庫、東京を周る。神奈川公演については、関係者席開放につき、在庫追加のうえ、チケット好評発売中。
取材・文 武田吏都
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