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橋爪功×井上芳雄の二人芝居「謎の変奏曲」が9月14日に開幕、それに先駆けて公開ゲネプロが行われた。
本作は、1996年にフランスで初演されて以降、世界中で上演されているエリック=エマニュエル・シュミットの戯曲。サー・エドワード・エルガー作曲の「エニグマ(=謎)変奏曲」が持つ“謎”をモチーフにした、ふたりの男の会話劇だ。日本でも上演を重ねられてきた作品だが、今回、演出に森新太郎、翻訳に岩切正一郎とスタッフを一新。新たな「謎の変奏曲」が誕生した。
物語は、ノルウェー沖の孤島で一人暮らしをしているノーベル賞作家アベル・ズノルコ(橋爪)のもとへ、地方新聞の記者と名乗る男エリック・ラルセン(井上)が訪れることから始まる。ラルセンは、ズノルコが初めて“愛”について書いたという最新作『心に秘めた愛』を取材するためにきたという。のらりくらりと質問をかわすズノルコと、「ほしいのは真実です」と食い下がるラルセン。しかしふたりが互いの嘘に気付き始める頃、いくつかの真実が明らかになっていく――。
橋爪と井上による、約2時間半(途中休憩あり)の二人芝居。セットチェンジも一切なく、ただただふたりの会話だけで物語が進んでいく。観客はじっとふたりの会話に耳を傾け、一挙手一投足を見つめ、彼らと共に隠された真実を知っていく濃密な時間だ。
橋爪の演じるズノルコは、ラルセンを迎えたときにみせた“孤島暮らしの偏屈な大作家”という姿が、ラルセンの指摘、自身の独白、そして知ることになる真実の一つひとつから、変貌していくさまが巧み。ふと気づくと滲み出るものも外見も全く違う人間のようになっており、俳優の恐ろしさを感じさせられた。井上の演じるラルセンは、最初から何かを隠し持った雰囲気はあるのだが、それがどこに向かっているのかを誰にも捉えさせない。それにより、ズノルコの言葉に対してラルセンが何を言うかが読めず、物語を煙に巻き、作品全体の緊張感を生み出すのだ。
息を呑む一言、その言葉が変える空気、そして長い長い会話の末にふたりがたどり着くひとつの真実。それを見届けた私たち観客はどんな表情で劇場をあとにするのか。芝居の醍醐味をじっくりと味わい尽くせる、森新太郎演出作品ならではの本作。劇場にしかない時間をぜひ楽しんで!
東京公演は、9月24日(日)まで東京・世田谷パブリックシアターにて上演。その後、大阪、新潟、福岡を巡演する。チケット発売中。
取材・文:中川實穂
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