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演 劇
劇団た組。の第15回目公演 シアタートラム版「壁蝨」がこの秋に上演される。本作はシアタートラムと三越劇場というふたつの劇場で上演され、それぞれ違うキャスト(※一部同キャスト)が出演する。シアタートラム版で主人公を演じる岡本玲と、劇団の代表で脚本・演出を手掛ける加藤拓也に話を聞いた。
「初めてご一緒するのですが、加藤さんのお噂はかねがね。“演劇変態”がいるって(笑)。だから楽しみです!」と明るく笑う岡本。加藤は、岡本を主演に抜擢した理由を「三越劇場版では主人公を時代ごとに3人で演じるけど、シアタートラム版はひとりで演じるので。振り幅があるという点で、岡本さんがいいんじゃないかって思いました。雰囲気的にもとてもいいですし」。
岡本が演じるのは、約5千人にひとりの割合で発症するという女性器を持たずに生まれてくるロキタンスキー症候群を患う主人公。脚本を読んで岡本が「最初は病気がキーワードなのかと思って読んでいたのですが、そこじゃなかったですね」と語るように、加藤も「主人公が人生を進めていくにあたって、小さな選択を繰り返していくようなお話です。それも例えば怒るか怒らないかとか、友達に同意するかしないかとか、そういう選択です」と説明。描かれるのは病ではなく“人間関係”だ。
加藤は作品をつくるとき、「名前のない感情に出合いたい」のだといい、「お客さんには、その“名の付くことのない感情”に対してどう名前を付けたくなるのか、そういうのも体感してほしい」と語る。今作もそういうものがラストに待ち受けるが、それを体現する岡本は「なにもしちゃいけないなって思いました。映像作品をやっているとガソリンがなくても点火できる能力を身に付けてしまいがちですが、それをちょっとでもやると“名の付いた感情”で(芝居を)つくっちゃうことになると思うので。ただ感じることを大切にしないといけないなと思いました」
12歳からさまざまな作品で演じてきた岡本だが、実は今作には“初めて”が詰まっている。「ここまで出ずっぱりの役は初めてかもしれないです。『なんでできないんだろう』ってフラストレーションがたまってたので(笑)、やっとできる喜びがあります。15歳から大人までを演じることもですし、母娘のこれだけ濃密な話も初めてです」。母親役は9年ぶりの舞台出演となる石田ひかりだ。
23歳の加藤と26歳の岡本。同世代のタッグの感想を聞いてみると「年齢は気にしない」と口を揃えた。共にその言葉を納得させる雰囲気を持つふたりが果たしてどんな作品をつくりあげるのか、期待したい。
シアタートラム版「壁蝨」は9月29日(金)から10月1日(日)まで。三越劇場版は8月30日に公演終了。
取材・文:中川實穗
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