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シェイクスピア作品の中でも人気の高い「リチャード三世」。残忍で狡猾だが抗いがたい悪の魅力を放つリチャード三世に佐々木蔵之介が扮し、ほぼオールメール(唯一の女性キャストに渡辺美佐子)で上演される話題の舞台「リチャード三世」の稽古がいよいよ始まった。スタッフ、キャストのほか、公演・事務所関係者も含め総勢約80名が集結した顔合わせの後、台本の初読み合わせも行われた。
この舞台のもうひとつの大きなトピックは演出家。日本にも「ルル」「ガリバー旅行記」「オイディプス」で過去3回来日公演を行い、過剰ともいえる圧倒的なエネルギーの舞台で日本の観客を戦慄させてきたルーマニアの鬼才シルヴィウ・プルカレーテが、初めて日本人キャストを使って作品を作る。プルカレーテはその場の全員に向け、「私にとっても皆さんにとっても新しい経験になると思います」と挨拶。「『グッドラック』と申し上げて、仕事を始めたい」と、本番を含め約2か月に渡るクリエイションの口火を自ら切った。
その後の読み合わせは非公開だったが、読み合わせ前に語った言葉の中に、プルカレーテ流創作のヒントが散りばめられていた。
「読み合わせというものを始める前に、まずリラックスしてください。ゆっくりと仕事を始め、ゆっくりと世界に入っていくのが私のやり方。まず知り合いましょう。俳優と会話をしていろいろ見つけながら作っていきたいのです。頭の中にいくつかある方向性という名の扉を皆さんと開けて、その方向に一緒に進んでいきたい」
主演・佐々木らキャスト陣は、引き込まれるように耳を傾ける。「面白そうなことが始まるぞ!」という、実力派ベテラン俳優たちの心の声が聞こえてきそうだ。
「1年前ぐらいに行ったオーディションのときに、ほぼオールメールというのを決めました。最初から物事をクリアにしないという私の方針上、完全なオールメールにはしないことに。これで、道筋がいっそう混乱を極めることになったと思います」
笑みを交えず淡々と、だがほのかにユーモア漂う語り口のプルカレーテ。稽古場には既に、ルーマニアから運んできたというセットがいくつか置かれていた。コンテナ? 浴槽?なんとも断言できない装置ばかりで、いずれもずいぶん錆びている。
演出家自身もまだ道筋が見えぬクリエイションに乗り出すカンパニー。だがそれはかつてなく刺激的な旅で、結果生まれる作品もきっと、かつてない衝撃を観客にもたらすだろう。東京公演は10月17日(火)から30日(月)まで東京芸術劇場 プレイハウスにて。
取材・文:武田吏都
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