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故・蜷川幸雄氏が初代芸術監督となり、シェイクスピア戯曲全37作上演を目指して1998年にスタートした「彩の国シェイクスピア・シリーズ」。蜷川氏亡き後、吉田鋼太郎が2代目芸術監督に就任し、第33弾『アテネのタイモン』で演出・主演を担う。「蜷川さんはあまり日本では上演されていない5本を残して逝ってしまわれた。難物が多いが(笑)、蜷川さんの魂をしっかり受け継ぎたい」と吉田が心境を明かした。
主演作『タイタス・アンドロニカス』など、16年にわたり蜷川氏の作品に出演してきた。「蜷川さんは役者がノープランで稽古場に来ることを許さない人でしたが、最後の数年は僕の演技にほとんどOKを出してくれました。酸素吸入の管をつけながら俳優に『違う!』と叫んでいた命懸けの演出、その時横で僕が感じたもの。ある時にワンシーンの演出を任せてくれたこと、それら稽古場でのコミュニケーション全てが、今回の糧になっています」。
『アテネのタイモン』は吉田演じる気前のいい貴族のタイモンが、人々に金品を分け与えるうちに破産し孤立していく物語。「お金が底をついてもタイモンは悲観的にならず、『僕には友人という財産が残っている』と。でも友人は誰もお金を貸してくれない。前半は非常に明るい華やかな世界ですが、後半はうって変わって呪いと憎悪の世界になります。ダイナミックで、実際上演すると非常に面白い作品だと思います」と話す。
タイモンと相対する哲学者役は藤原竜也。「古典をやる俳優として藤原くんを信頼し尊敬していますし、やはり彼がいてくれると心強い。辛辣で毒を吐き散らす男の役で、彼にぴったりです(笑)」。さらに『デスノート THE MUSICAL』で共演した柿澤勇人が同シリーズに初出演。「彼は怖いぐらいの、ものすごいエネルギーを持った俳優。あのパワーはシェイクスピアによく合う。直情径行・猪突猛進型の軍人役というのもぴったりです」と笑顔を見せる。
吉田自身、20年間主宰の劇団AUNでは演出も務め、日本で有数の“シェイクスピア俳優”と言われる。「シェイクスピア作品は、感情の火柱がすごく太くて実は分かりやすい。例えばハムレットを見て『自分はこんなことしないだろうな』と思っても、ふと『あれ、似ているかも』と思うところが必ずあります」。そんなシェイクスピア作品を熟知した吉田に、今蜷川氏が声をかけるとしたら、と尋ねると――。「あの人は、褒めていてもこちらがいい気になったら怒る。油断できないんですよ! だから『おい鋼太郎、なにやってんだよ!』と、蜷川さんがココ(真横)でいつも言っているつもりでやりたいです」。
12月15日(金)から29日(金)まで埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 大ホール、2018年1月5日(金)から8日(月・祝)まで兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて上演。チケット発売中。
取材・文:小野寺亜紀
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