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生瀬勝久が“王”を演じて人間と社会を問いかける
2017年12月06日 18時15分 [演劇]
生瀬勝久
生瀬勝久

今や映像作品に欠かせない存在となっている生瀬勝久。その圧倒的な存在感と演技力を味わえる舞台が上演される。フランスの劇作家ジャン・アヌイの代表的悲劇作品『アンチゴーヌ』である。演じるのは、法と秩序に従って政治の責任を貫く王クレオン。良心に従って自己の信念を貫く姪アンチゴーヌとの対立を通して、国家と個人、理想と現実など、人間が社会で生きていくなかでの問題を投げかける。ギリシャ悲劇がもとになっている普遍的で力強いこの物語を、いかにリアルに届けるか。

舞台『アンチゴーヌ』チケット情報

物語は、アンチゴーヌ(蒼井優)が、反逆者として野ざらしにされた兄の遺体に弔いの土をかけて捕らえられたことに始まる。王クレオンが、弔いをやめれば法に背くその行為を不問に付すと呼びかけるも、死刑をも恐れず自分の道を進むアンチゴーヌ。王に扮する生瀬の目には、その対立はこう映る。

「この王が言っているのは、親が子に、“人間として社会で生きるにはルールを守らなければならないんだよ”と教えるのと同じようなことだと思うんです。それに対してアンチゴーヌは、ルールよりモラルが大事だと言うわけですね。果たしてどちらを取るべきかというのは非常に難しい話であって。ルールを破った者に非情な判断をくださなければならない王もルールを破った側も、どっちも悲劇なんですよ。でも、それがこの世界なんだと。だからこそ、この作品は時代を超えて世界中で上演されているんだと思うんです」。

その普遍的な内容を体現するために生瀬が大事にしたいのは、“行間”だ。膨大なセリフ量で構成されている戯曲だけになおさらその思いは強い。「セリフが多いのは、それだけ話さないと納得してもらえない状況があるから。そして、それを舞台にかけるということは、生身の人間がどう話して説得するかということがポイントになってくるわけです。だから、『あれだけのセリフをよく覚えましたね』なんて褒められるのがいちばん悲しい(笑)。王のなかの逡巡もきちんと表現して、アンチゴーヌと丁々発止し、リアルで危うくて緊張感のある芝居にしたいと思うんです」。

十字状の舞台を四方から観客が取り囲むという特設ステージも、緊張感を高めるものになるだろう。「僕たちを間近に観て、『蒼井優ちゃんがかわいそう』『いやいや生瀬さんの言ってることもわかる』と自由に受け止め考えてもらえたらいいなと思います」。常に硬軟自在に作品のなかに生きる生瀬、伝えてくれるものは様々にあるはずだ。

公演は1月9日(火)から27日(土)まで東京・新国立劇場 小劇場にて。その後、長野、京都、愛知、福岡を巡演。

取材・文:大内弓子

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