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人殺しとして戦い続ける意味。松坂桃李主演舞台『マクガワン・トリロジー』レポ
2018年07月19日 12時00分 [演劇]
舞台『マクガワン・トリロジー』ゲネプロより 撮影:岡千里
舞台『マクガワン・トリロジー』ゲネプロより 撮影:岡千里

7月13日、東京・世田谷パブリックシアターにて松坂桃李の主演舞台『マクガワン・トリロジー』が開幕した。

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トリロジー(3部作)という名の通り、1年おきに起きた3つのエピソードから構成。IRA(アイルランド共和軍)の内務保安部長ヴィクター・マクガワンの3年を描く。1部では、アジトとなっている廃れた地下のバーを舞台に、ヴィクターと同胞アハーン(小柳心)、司令官ペンダー(谷田歩)、モヒカンのバーテンダー(浜中文一)の激しいやりとりが展開される。

とにかくヴィクターという男がイかれている。多弁で多動、自己主張の塊。まるで自分が正義であるが如く、周りの人をからかい、愚弄する。バーカウンターに寝そべり、大声で歌い、謎のステップで踊り、時には轟音を出して威嚇。情報漏洩を疑われるアハーンに対しても、話を聞く気なんてサラサラなく、組織のやり方に従って意見聴取しようとする司令官ペンダーのことも見下す。バーテンダーや外の見張りとの会話もウィットに富み、状況を楽しんでいるようにすら見える。殺人マシーンとして最前線で戦ってきたヴィクターにとって、自分の意に沿わない相手は迷いなく処刑するのみ。ある意味、一線を越え切っているヴィクターの現状が恐ろしく、また刺激的でもある。これをエンタメとして楽しむ自分の視線に震えた。

2部は背の高い草が生い茂る湖畔が舞台。雰囲気は1部とは打って変わって、静かで内省的。手首を縛られた女(趣里)を車のトランクから出し、会話が始まる。なんと女はヴィクターの幼馴染で、かつて好きだった相手。しかし、この場ではヴィクターが処刑する対象なのだ。女は話の主導権を握り、昔話をし、命乞いをし、ダンスを求める…。ヴィクターの内面や性格をよく知り、故郷の原風景を共有する女に、初めてヴィクターは迷いが出る。後悔なのか、最後、彼からほとばしる感情が胸に刺さる。

3部では、傷だらけのヴィクターが老人施設に入院する母の元を訪れる。呆けた母は彼を弟と勘違いし、会話が進む。噛み合わない会話の中で、母のヴィクターに対する本音を知る。母に認められたいと頑張ってきたインディアンのような髪の男の子、それが裏切られたことのショックとは…。

元は1部だけの作品だったが、ヴィクターのその後を知りたいと3部作になったとか。相手が変わることで、それも幼馴染や母親と根源的な相手になることで、ヴィクターの内面が浮き出てくる面白さ。UKポップスやアイルランド音楽など、要所要所で音楽が物語を後押しするのも効果的だ。松坂桃李は出ずっぱりで熱演。静と動、振り幅広く、ヴィクターを豊かに演じ切る。今、最も俳優として伸び盛り。舞台俳優としての生の松坂の魅力を存分に味わった。

舞台『マクガワン・トリロジー』は7月29日(日)まで、東京・世田谷パブリックシアターにて上演。

取材・文:三浦真紀

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