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大地震により津波と原発事故が起きた町を舞台に、夫婦であるヘイゼルとロビン、そして夫婦の元同僚のローズが織りなすドラマ『チルドレン』。ロンドンはウエストエンドで注目を集めた本作の日本初演を前に、ヘイゼル役の高畑淳子とロビン役の鶴見辰吾に話を聞いた。
ふたりが口をそろえるのは、気鋭の劇作家ルーシー・カークウッドの戯曲の魅力だ。「登場する3人は皆、変な人達(笑)。ロビンは女好きだし、ヘイゼルは異常に几帳面だし、ローズはローズでかなり、おかしな人で。そうした俗物たちの日常が巧みに描かれると同時に、ふとした瞬間には詩的だったりハッとさせられたりするのが、素晴らしいんです」と言う高畑に、鶴見も「僕は劇の途中で登場するので、しばらく高畑さんのヘイゼルと若村(麻由美)さんのローズの会話を聞く時間があるのですが、本当に面白い。その後の僕ら夫婦のやりとりもリアルですよね。しかも、ただその場その場を楽しく盛り上げるだけでなく全てに意味があり、何かしらの伏線になり得るんです」とうなずく。
高畑、鶴見ともに、栗山民也の演出は既に経験済み。信頼を寄せる演出家だ。
「”栗山マジック”があるんですよ。『アドルフに告ぐ』(2015年)でご一緒した時には、”ある公演の稽古に来なくなったダンサーがいて、どうしたのかと思ったら、舞台に合わせて何日もご飯を食べないとどうなるのかを試すうちに倒れてしまい、保護された”という話をなさって我々を追い込んだ(笑)。栗山さんらしいなあと思いました」と鶴見。「ロジカルに攻めるかと思えば、意外とシンプルに”そこでエビ反りしてみようか”みたいなこともおっしゃるしね。実際にエビ反ってみるとそこがすんなり流れたりするんです。それでうまくいくなら、幾らでもエビ反りますよ! お客さんに届けるためならできることは全てしたいですから」と高畑。
経験豊かなふたりにとっても、本作は大きな挑戦の場だという。
「僕は60歳過ぎで孫もいる役は初めて。実年齢よりずっと上なので大丈夫だろうかと最初は不安だったんです。でも本を読んでみて、そうしたことはすっ飛ばして演じられると確信しました。本を読み直すたび、お稽古をするたび、発見が出てくるでしょうし、その発見のどこを淘汰するかという作業も必要になる。大変ではありますが、右往左往した時間が多ければ多いほど、豊かな芝居になると思うので、そこを楽しみにしたいですね」(鶴見)
「私は普段、共演者の声も聞かないうちに台詞を覚えるのは、邪道だと思っているのですが、今回はそうもいかない!と早めに準備しました。読んでぱっとわかる芝居ではないから、どうなるんだろうという不安は正直あります。でも、大人3人がガチで日常を演じながら、作品の抱えているものをぶつけ合えたら、観たことのない芝居になる予感がする。そのためにも稽古場では、色々なことを探して試したいと思います」(高畑)
公演は9月8日(土)埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 大ホールより。その後、 全国を周る。
取材・文:高橋彩子
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