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市村正親と鹿賀丈史がWキャストで主演を務める黒澤明 没後20年記念作品『ミュージカル 生きる』が10月7日(日)に開幕する。市村と鹿賀の2チームで上演される本作の、鹿賀チームの通し稽古に潜入した。
本作は、黒澤明監督の代表作「生きる」(1952年)を初めて舞台化した作品。演出は宮本亜門、作曲・編曲は「デスノート THE MUSICAL」などのジェイソン・ハウランド、脚本・歌詞はディズニー作品の訳詞でも知られる高橋知伽江。役所の市民課に30年休まず務めてきた主人公・渡辺が、定年退職を目前に病で余命半年であることを知り、生まれて初めて自分の人生を探し始める姿を描く。
脚本や楽曲、芝居、歌、セットから小道具に至るまで、徹底的に詰められたであろうことが存分に伝わってくる通し稽古。キャスト陣の芝居もそれぞれが印象的で、ミュージカル初挑戦の市原隼人は父親の変化に戸惑いぶつかる息子を熱演。新納慎也が演じる小説家は本作ではストーリーテラーの役割も担うが、その独特な存在を新納が絶妙に溶け込ませる。渡辺の部下とよを演じる唯月ふうかは、次の時代を生きる女性の活発で生き生きとした姿が鮮やか。息子の妻・一枝役のMay’nも市原同様ミュージカル初出演だが、新しい時代を謳歌する女性を美しい歌声でみせる。そして山西惇が渡辺の意志を阻むヒール・助役をどっしりと演じる。しかしそのなかで、やはり鹿賀の圧倒的な存在感はなんとも言えないものがあった。ただただ判で押したような生活を続けてきた男が余命を知り、生きようともがき始める様を、繊細に豊かに、けれどときにお茶目に演じる。そして歌唱の一つひとつが強烈に胸を打つのだ。
主人公は不治の病で亡くなってしまう。舞台上で必死に生きていた彼がもういないと知るのは寂しくなることなのだが、さまざまな場面で稽古場のスタッフたちが流していたのは、悲しみの涙ではなかったように思う。そこで沸き上がる感情はぜひ劇場で体感してほしい。
66年前に発表された映画『生きる』は、世界のクロサワの代表作のひとつとして今なお愛される作品だ。映画を観たことがある人は、作品と“ミュージカル”という表現方法が結びつきにくいかもしれない。映画を観たことがない人は、静かで高尚で重い世界観をイメージするかもしれない。けれどそのどちらの人にも驚きと発見を届けるような、そんな作品になっている。一方のチームを観ると、もう一方のチームも観たくなること必至な本作。まずは早めの時期の観劇をオススメする。
公演は10月7日(日)にプレビュー公演、本公演は10月8日(月・祝)から28日(日)まで東京・TBS赤坂ACTシアターにて。
取材・文:中川實穗
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