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1997年の初演以来、何度も上演されてきた土田英生(劇団MONO)の人気作『-初恋』が、登場人物を増やして現代の世相を切り取り『−初恋2018』としてリニューアルされた。9月27日(木)に東京・東京芸術劇場シアターウエストで幕を開け、10月4日(木)まで1週間上演している。
とある島に建つ「ハイツ結城」。そこには同性を愛する男性ばかりが入居している。初代管理人・結城の哲学を尊敬する堅物の笹川(デビット伊藤)、密かに女装に興味を持つ源田(深来マサル)、明るさが時に空回りする真田(南翔太)、最近元気がない最年少の久野(伊藤裕一)。彼ら4人が住むハイツを、結城の娘である小百合(小島梨里杏)が甲斐甲斐しく盛り立てている。そこは、同じ痛みを共有し、安心して暮らせる“城”だった。しかしある入居者の「好きな人ができました」という告白が、彼らの関係や人生にまでも影響を与えることになる。
土田が描く男たちは、バカ話に花を咲かせ、他人にとっては小さな事にこだわる。そんな様子が愛らしくて可笑しい。しかし笑いを重ねていくうち、日常会話の些細なズレが登場人物たちの認識や本性、弱さを滲ませていく。その様は、土田が今年手がけたテレビドラマ『崖っぷちホテル!』でも感じられた。土田の本を人気演劇ユニットiakuの横山拓也が潤色。モロ師岡演じる「ハイツ結城」とは袂を別った元住人・吉村らの存在を際立たせる。
最近とくに“LGBT”という言葉が広く認識され始めている。テレビのバラエティ番組で同性愛を揶揄する表現に苦情が寄せられたり、渋谷区を皮切りに同性のパートナー関係を証明する制度が導入されるなど、同性愛をめぐる社会的状況は変化してきた。それでも日々、差別的な発言は問題となっている。過疎化が進む土地ならば尚更だろう。「ハイツ結城」に住む面々も、それぞれがハイツを一歩出れば、職場や街中で周辺住人から疎まれ肩身の狭い思いをして生きていた。ひとつ屋根の下で暮らすことで孤独を分かち合おうとしていた彼らだが、会話を重ねるほどに、誰ひとりとして同じ人間はおらず、心の底から理解できないことを思い知らされる。
当時よりも“LGBT”への理解が広まりつつある。しかし“LGBT”という言葉が普及するほどに、そこに含まれる人間はひと括りにされがちだ。『−初恋2018』は、それぞれが違う考えを持った人間だと改めて認識させる。すると、ひとりひとりが踏み出す一歩を応援したくなってくる。
取材・文:河野桃子
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