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演 劇
市村正親と草笛光子の顔合わせで、『ドライビング・ミス・デイジー』が上演される。映画版がアカデミー賞最優秀作品賞をはじめ数々の賞に輝いた作品への挑戦である。共演は1993年の『ラ・カージュ・オ・フォール』以来25年ぶりとなる名優ふたり。不朽の名作を深く豊かに作り上げてくれそうだ。
1948年から25年間が描かれる物語の舞台となるのは、まだ人種差別意識が残るアメリカはアトランタ。夫を亡くしている72歳のユダヤ人・デイジー(草笛)が、運転していた車で事故を起こし、心配した息子が黒人の運転手・ホーク(市村)を送り込んできたことからストーリーは動き出す。独立心が強く黒人嫌いでホークを拒絶するデイジー。それでも辛抱強くデイジーのもとに通うホーク。そんなふたりが徐々に心を通わせ、ついにはかけがえのない友人となっていく姿が描かれる。
上演のきっかけを作ったのは、演出を手がける森新太郎だ。「ミュージカルとかシェイクスピアではなく、違う市村を見たいと森さんが持ってきたのが、この作品だったんです」と市村。そこでデイジー役に浮かんだのが草笛だった。「市村さんから電話があったんです。“こういう話があるんだけどやらない?”って森さんから言われたと。実は前からいつかやりたいと思っていた作品だったこともあって、その場ですぐにやりたいと返事しました。それに、最初の勘として、市村さんとなら面白い関係になるなと思ったの」と草笛は言う。
ただ、面白くなりそうだからこそ、草笛には心配なこともあるようだ。「台本を読んだらふたりのやりとりがあまりにも面白くて、しかも相手が市村さんだから、漫才になってしまったらどうしようと思ってるんです(笑)。謹厳なデイジーとして常に凛としていなきゃいけないのに」。それに応えて市村は、「大丈夫。森さんが漫才にはしないだろうし、僕は草笛さんのデイジーの台詞を聞いて、デイジーの生き方を見て、それに反応していくだけですから」ときっぱり。草笛も、「喜劇的な面白さもありつつ、深いものを腹に入れて演じないとこの作品の良さは出ないですものね。最後には人の心をズンと打たなきゃいけない」と引き締まる。年齢とキャリアを重ねてきたふたりだから表現できる人間ドラマとなるはずだ。「草笛さんとこの作品ができることが幸せ。長く俳優をやってきてよかったなと思います」と最後に語った市村。この巡り合わせに立ち会えるのは、なんと幸せなことだろう。
公演は6月22日(土)から7月15日(祝・月)まで、東京・紀伊國屋ホールにて。その後、7月17、18日に宮城・電力ホール、7月23日に愛知・日本特殊陶業市民会館を巡演する。ぴあでは2月1日から11日まで東京公演の抽選先行エントリーを受付中。
取材・文:大内弓子
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