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第53回岸田國士戯曲賞に輝いた蓬莱竜太の傑作『まほろば』を、新たに劇団チョコレートケーキの日澤雄介が演出。ほぼキャストも一新し、7年ぶりに上演される。そこで宝塚歌劇団の元トップスターであり、本作のミドリ役で初のストレートプレイ挑戦となる、早霧せいなに話を聞いた。
物語の舞台は長崎の田舎町にある日本家屋。祭りの準備に追われる母・藤木ヒロコのもと、上京していた長女・ミドリが帰って来る。次女のキョウコは、かつて父親不明のユリアを出産。この家に住みつつ、現在はマオという子供を持つ男とつき合っている。祖母のタマエを含め、6人の女性が集った藤木家。そして祭りの夜、それぞれの思いが交錯して…。
早霧演じるミドリは、東京でバリバリ働きつつ、あることをきっかけに実家へと戻って来た女性。そんなミドリに、早霧は自らの姿を重ねる。「台本を読んだ時に、他人事じゃない感じがしたんです。まさに自分も長崎出身で、今東京に住んで、お仕事をしている。自分に近い部分がたくさんあるだけに、裸の私を見せているような感じになるのではないかと…。でもそこは役者の見せどころで、素の自分とは違う、あくまで“ミドリ”という役として存在できるよう、皆さんとつくり上げていきたいと思います」。
本作の大きな魅力であり、それぞれの人物像を形づくる一翼を担っているのが、長崎弁のせりふだ。「これはもう完璧ですね。方言指導の方が録音してくださったものを聞いても、『あー、分かる、分かる』って(笑)。ただ私は帰省するとすぐ長崎弁に戻るのですが、ミドリはしばらく標準語のまま。きっと家族に対して虚勢を張っていることが、その標準語に表れているんだろうなと。そんなミドリが長崎弁に戻った瞬間こそが彼女の本性だと思いますし、演じる上ではとても大きなポイントだと思います」。
世代も、生きてきた道のりも違う6人の女性たち。観た者の心に残るものも、きっとさまざまに違いない。「劇中に『普通』というせりふが出てくるんですが、それって何だろうと思うんです。適齢期に結婚し、子供を産み、立派に育てあげることが普通なのか。でもそうじゃない生き方にも幸せはあるんじゃないかと。そういうことを考えると、最後のミドリのセリフはシンプルが故に難しい…。ただミドリとしてしっかりと存在し、発することが出来れば、きっとこのひと言は、お客さまの心にスッと入っていくものになるではないかなと思います」。
公演は4月5日(金)から21日(日)東京芸術劇場シアターイースト、4月23日(火)・24日(水)大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて。チケットは3月2日(土)一般発売。
取材・文:野上瑠美子
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