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温泉につかっているような多幸感のある鶴瓶噺は、観客に緊張感を与えない。ある日のライブでは「寝てていいよ」とさえ本人が言うほどの自由奔放さ。そんな鶴瓶噺のライブでは、選ばれるツッコミの言葉も自由で独特だ。ある後輩落語家に対して独特なツッコミの言葉を選んだそのココロから話を聞いた。
「長野に向かう電車の中で偶然会った人が“松喬さんって知ってますか?”と聞いてきたんですね。うちの後輩で、七代目笑福亭松喬という落語家ですと答えたら“今度、松喬さんの息子さんとうちの娘が結婚するんですよ”って。えぇっ!?て。そんな偶然、うれしいし驚くじゃないですか。それで、別の機会に松喬本人と会った時にその話をしたら、“あぁ、そうですか”ぐらいの薄っすい反応で、一切会話が弾まなくて。松喬はええやつです。落語もめちゃくちゃおもしろい。でもね、鶴瓶噺のライブではこうツッコまざるをえなかった。“ワクワクせぇや!”って(笑)」
鶴瓶噺の原点は、「高校時代のツレとの雑談」。“青春っぽい”そのツッコミにも会場は大爆笑だったが、鶴瓶噺にまったくないのが“大御所っぽさ”。鶴瓶の口癖のひとつでもある「そんなんどうでもいい」が、そのことを代弁している。
「まわりが気を使ってくれて、振り返ったらぎょうさん僕を見送ってくれるとか……そんなんどうでもいいんです。外で寒いのにずっと頭下げて見送ってくれるんですけど、全然うれしくなくて、だったら、うちのマネージャーみたいに接してもらえたほうがうれしくて。この間もね、NHKのアナウンサーの女の子に、僕のことを“痩せたでしょ?”と説明してくれていたんです。映画の役作りで8kgぐらい落としましたから。マネージャーは“昔みたいに紐パンをはかなくなりました”って。いや、言わんとしてることはわかる。スウェットのパンツとかってゴムじゃなくて紐でウエストを調整するやつもあるでしょ。でも、それを聞いた女の子は例のパンツだと思うじゃないですか。実際、“え? 紐パンだったんですか?”ってすっごい驚かれて。違う違うと(笑)」
鶴瓶噺には一切の大御所感がなく、むしろ男子校ノリの青春感が強い。語り部本人は芸能界の大御所のひとりだし、鶴瓶噺の歴史だけでも50年近くあることを考えるとちょっと脅威的ですらあるが、当の本人は「不思議なんやけど、なんで初対面の人が財産分与の話をしてくるんやろ?」と雑談を続けるのだった。
「太田胃散 PRESENTS TSURUBE BANASHI2019」は4月10日(水)から14日(日)まで、大阪・サンケイホールブリーゼ、4月17日(水)から21日(日)まで、東京・世田谷パブリックシアターにて上演。チケットの一般発売は3月16日(土)午前10時より。
取材・文:唐澤和也
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