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演 劇
井上芳雄、栗山千明らが出演する舞台『十二番目の天使』が3月16日、東京・シアタークリエにて開幕した。全世界で著作が3600万部以上読まれている人気作家オグ・マンディーノの同名小説を初舞台化。家族を亡くし絶望の淵にいた男が、人々との関りの中でふたたび生きる勇気を手にするさまを温かい筆致で描く作品だ。
ビジネスで大成功を収め、故郷に戻ったジョン(井上)。幸せの絶頂にいた彼だったが、その矢先、交通事故で妻子を亡くしてしまう。ふたりのいない世界に絶望し自ら人生の幕を下ろそうとしたジョンに、幼馴染のビルがリトルリーグの監督を頼んできた。そのチーム、エンジェルスでジョンは、どこか息子と似ている少年・ティモシーと出会う。彼は身体も小さく運動神経も悪かったが、けしてあきらめない精神を持っていた……。
わずか7人の出演者で、登場人物たちの心の変化から野球の試合の熱狂までを描ききる。演劇の面白さが詰まった作品だ。特に井上の繊細な演技力が光る。妻子を失ったジョンが抱く空虚さ、そこから少しずつ顔を上げていく過程を丁寧に見せる、静かな熱演だ。そしてもうひとりの主役といっていい存在が、ティモシー/リック役の大西統眞(溝口元太とのWキャスト)。理知的な表情と落ち着いた芝居で、ある秘密を抱えながらも「絶対、絶対、あきらめない!」と前向きに努力する少年をひたむきに演じる。リトルリーグのエース・トッド役の城野立樹(吉田陽登とのWキャスト)の爽やかな力強さとともに、少年たちのまっすぐさが、人生を諦めてしまった男にふたたび光を当てるのだ。ティモシーの母ペギーを演じた栗山の包み込むような温もり、ジョンに常にさりげない優しさを向けるビル役の六角精児らの存在感なども上手く物語にはまっている。派手さはなくとも、観た者の人生の中で特別な一作になりうる素敵な作品だ。
開幕に際し井上は「他に類を見ない演劇のスタイルと言っていいと思うので、きっとお客様の反応がプラスになる作品。悲しみの中にいる人をとても具体的に励ます、希望の物語だと思います。大事な人や、家族に会いにくるようなつもりで観に来ていただけたら嬉しいです」とコメント。栗山も「少し悲しい話ではあるのですが、ティモシーの『あきらめない』『毎日良くなっている』という言葉を持って、お客様にも前向きなあたたかい気持ちで帰っていただけるはずです」とアピールした。
公演は4月4日(木)まで同劇場にて。その後4月6日(土)・7日(日)の新潟公演を皮切りに全国8箇所で上演される。
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