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蓬莱竜太の岸田國士戯曲賞受賞作『まほろば』が7年ぶりに上演。連綿と途絶えることのない人間の営みを、妊娠、家系、血脈など奥深いテーマを散りばめ、軽妙な4世代の女たちの会話劇に仕立てる。何気ない会話から熱く脈打つ命の尊さに触れるような驚きと普遍性に満ちた、ユーモアたっぷりの人間ドラマだ。前回までは長女ミドリの視点から描かれた物語が、今回は母ヒロコを中心に展開する。演出は劇団チョコレートケーキの日澤雄介。伝統やしきたりをギリギリ受け継ぐ“旧世代”代表・ヒロコ役を演じる高橋惠子に意気込みを訊いた。
「ヒロコは、本家の嫁として家を受け継ぎ守っていくため、娘たちに結婚、出産してほしいと強く思っている人。でも『神様のおぼしめし』と台詞にもあるように、命の誕生は人間の力だけではどうしようもなくて。他にも、家族が持ち込んでくる様々な問題に、親としてどう対処していくのか。たった1日の出来事が、休憩なしの2時間で一気に駆け抜けていく。その中で、本当の肉親同士のやり取りに見えないといけませんから、私も本音というか、はらわたからの叫びくらいのイメージで演じた方がいいなと。表面だけの台詞のやり取りだけでは終わりたくない作品です」
演出家からはどんどんボルテージを上げてとの指示が飛ぶ。そのなりふり構わない会話の妙が共感や笑いを誘う。「笑えますよね。ヒロコは自分の代で家を途絶えさせるわけにはいかない!と使命感に燃える。それは言いすぎではと思える娘たちへの言葉も、真剣そのものだからこそ。男性作家だから客観的に観察ができるのか、各年代の女性たちの真実が描かれていると思います」。今回初のストレートプレイに挑む元宝塚歌劇団雪組トップスター早霧せいなをはじめ「美人揃いの娘たち」ともすでに息ぴったりと声を弾ませる。「ダブルキャストの子役の2人も持ち味が違っていて、11歳なのに作品の中で一番発言が大人びているのも面白いんです」
上演は平成最後のタイミング。そこにも運命めいたものを感じると語る。「改元に伴い、世の中の価値観は今までになく大幅に変わっていくような気がします。一方で、変わらないものもある。例えば、妊娠、出産が3日で済むようになりましたとはなりませんよね(笑)。私も60歳を過ぎ、近頃は相手を敬う日本人のしきたりや知恵、日本語の美しさなど、良いものを後世に残したいと思うようになりました。まほろばとは素晴らしい場所という古来からの言葉ですが、蓬莱さんもそういう思いだったのかなと。何か、“忘れないでほしいことがある”と言われているような気もして。そんな思いもこの作品を通して伝えていければと思います」
公演は2019年4月5日(金)から21日(日)まで東京芸術劇場シアターイースト、4月23日(火)・24日(水)は大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演。
取材・文:石橋法子
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