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日本を代表する演出家・栗山民也が手掛けるオリジナルのミュージカル『ハル』の大阪公演が、4月22日(月)から梅田芸術劇場で幕を開ける。栗山に話を聞いた。
同作は、子ども時代に患った病を乗り越え、元気な体を手に入れたものの、やりたいことが見つからず、本音を話す友達もいない高校生のハルがボクシングに出会う物語。ハルを薮宏太(Hey!Say!JUMP)、ハルをボクシングに誘う真由を北乃きい、ハルの幼なじみの修一を七五三掛龍也(Travis Japan/ジャニーズJr.)と若手が顔を揃え、東京公演は大好評だった。栗山は「劇場は薮君のファンでいっぱい。今、若い世代が演劇から遠ざかる時代だからいいことですよね。薮君はボクシングジムにも通い、本当に真摯に役と向き合ってくれています」と話す。
ハルは絶えず周りの評価を気にし、自分には生きる価値がないと思い込んでいる人物だ。「今の若い人たちの震えや恐れなどヴィヴィッドな精神を主題にしたかった。中でも描きたかったのは、“ぶつかる”ということ。今の人たちは恋をしない、人と向き合わない。傷つくことを恐れ、ネットばかり見て自分の世界に入ってしまう。演劇とはぶつかるものでしょう。ぶつからないような演劇もあるけど、僕は好きではない。これ以上、ぶつかるものはないだろうとボクシングが題材になったのです」。
脚本・作詞を高橋亜子、作曲・音楽監督を甲斐正人が担当。震災やさびれていく街など、今の日本の現状を浮き彫りにした背景も、切実に胸に迫ってくる。「シェイクスピアの言葉にあるように、演劇は時代を写す鏡。虚構の世界から真実が見えてくる。今の時代を裸にしたミュージカルを作ることで、新しいものが見えてこないかと」。キャラクターは何を今、訴えようとしているのか。キャラクターと会話し、それを役者が自分で発見しない限り、嘘の表現になるという。「引き出しはあくまでも技術であり関係ない。稽古場は新しい引き出しを作る場所。皆、型にはまった同じような歌い方や演じ方はしてほしくない。いろんなジャンルの人が集まり、基本がバラバラだからこそぶつかり合い、面白い効果になるんです」。薮をはじめ、キャストは引き出しを見つけ、舞台に立つことが楽しくなっているそうだ。
また、“命とは何か”を問うラストにも注目だ。「物語をひとつ観客に渡すときは、たとえ3時間上演したとしても、その世界が見えてくるわけではない。でも、ちょっとした糸口や出発点に誘うことができるだろう。あとは観客ひとりひとりが想像力を働かせることが導きになる。無理やり結論を作ると、観客は安心するでしょう。でも物語は安心ではないから。人間の運命をギリギリのところで今の時代と照らし合わせて作る。その鋭利な姿勢を忘れてはいけないと思います」。
ミュージカル『ハル』大阪公演は、4月22日(月)から28日(日)まで、梅田芸術劇場メインホールにて上演。チケット発売中。
取材・文:米満ゆうこ
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