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演 劇

ステージいっぱいに敷かれた布を雪景色に見立て、子供達の雪合戦が始まった。そこで起きた事故をきっかけに、子供たちの関係が大きく動き出す――。
この物語は、フランスの作家ジャン・コクトー『恐るべき子供たち』の舞台化。白井晃演出、ノゾエ征爾脚本により6月2日(日)まで神奈川・KAAT神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉で上演中だ。
外界を知らずに成長した不遜な姉弟を演じるのは、南沢奈央と柾木玲弥。姉エリザベートは、母を病気で亡くし、ケガをして引きこもる弟との“王国”を守ろうとし続ける美しくも残酷な少女。愛情か、依存か……南沢はポールへの執着を、生々しく感情を剥き出しにして振る舞い、登場人物も観客も巻き込んでいく。また弟・ポールは我がままで癇癪持ち。ポールの魅力がこの作品のキモでもあるが、まっすぐな感情を持て余す繊細さで周りの子供達を惹き付ける。演じる柾木は「稽古で皆と合わせていく中で役ができていきました」と振り返る。
“物語の案内役”を担うのが、ポールの友人・ジェラール役の松岡広大。原作とは違う役どころとして、1歩離れた立ち位置で姉弟に関わっていく。松岡はストレートプレイ初出演だが、まっすぐで真面目な姿勢で丁寧に物語を語る。会見では「しっかりと言葉の意味を伝えることに、今まで以上にエネルギーを使いました」と真摯に述べた。
絶妙なバランスの3人。その危うい均衡を脅かすふた役を、馬場ふみかが演じる。すべての始まりとなる雪合戦でポールにケガをさせる少年ダルジュロスと、彼に瓜ふたつの少女アガート。傲慢なダルジュロスと繊細なアガートを演じ分ける。「ふた役それぞれ違った目線で作品について考えることができるので面白い。同時に、(役の)スイッチングの難しさを感じています」。
4人の子供たちの世界を白い布が表現する。1枚1枚剥いだり、布に溺れたり……自在に動く布が、彼らの関係性も表現する。強い風が吹いたら飛びそうな、もろい世界だ。「こんなにシンプルなセットは初めて。リングの上に立たされている気持ちで、逃げも隠れもできない状況での芝居です」(南沢)。4人以外の俳優たちが大人を演じ、子供だけの王国を際立たせる。
大人になることを拒絶する子供たち――。演出の変更は日々重ねられており、より良い作品を模索する。白井晃の要求に柔軟に食らいつく俳優たち。2週間の上演期間のうちに、これからも大きく進化していくだろう。チケット発売中。
取材・文・撮影:河野桃子
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