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大学時代には遺伝子工学の研究で一定の成果を挙げ、卒業後は実力派バーテンダーとして店を任されるなど多彩なバックボーンからも、幅広い教養と底知れぬプロ意識を感じさせる俳優の向井理。「ラクして良かったなと思ったことがないので。なるべく大変なことをやりたい」との思いで、1年に1本を目標に取り組むのが舞台だ。「去年できなかった分、これまで蓄積してきたものを披露したい」と気合い十分に挑むのが、市井の人々への眼差しに定評のある赤堀雅秋が書き下ろす、群像劇『美しく青く』。赤堀が描く他人の生活を覗き見するような「生々しい作品」に惹かれると言う向井にとって、念願の初タッグが実現した。
震災から数年後の日本。とある集落では日々獣害が深刻化していた。地元の缶詰工場に勤める青木保(向井理)は自警団を結成しリーダーを務めるが、住民らの士気は一向に上がらず…。「自分たちの日常の延長線上にあるような生々しい世界観の中で、自分だったら巻き込まれたくないような環境や状況も、客席から俯瞰で観ているとどこか滑稽で面白い」と、赤堀戯曲の魅力を語る。「劇中ではみんな結構くだらない話をしているのですが、でもそれが今後の展開のヒントになったり、後に物事が大きくなる火種になったりする。いろんなところに種を蒔いて、最終的にはすべてが回収されていく。よくできた脚本だなと」。演じる役については「人間誰しも大人になるとネガティブな記憶や経験は、ひとつやふたつあるもの。そういう憐れみや哀しみを抱えているのが人間だとも思うので。どこかに自分と共通する部分があると思う」。
舞台では常にオン状態。小さい物音にも敏感になり「その後、映像に戻ると以前とは違う感覚でお芝居している実感があります」。そんな研ぎ澄まされた感情の揺れをダイレクトに受け取れるのが、舞台の魅力のひとつだ。とりわけ本作は「生で観るべき題材」と強調する。「残念ながらここ数年の日本では、震災というものが身近な存在になっていますが、震災を描くというよりは、そういうところにも日常はあって、じゃあ日常ってなんだろう?という問いかけのような作品なんだと思う。赤堀さんがタイトル『美しく青く』に込めた思いというのも、例えば大変なことが起きても、ふと見上げた空の青さに気が晴れることもあるだろうし、良いことも悪いこともあるけど、結局24時間経ったら明日は来るし、生きていかなければならないということ。自分にとっての生きるとは、日常とは何だろうというのを少しでも考えるきっかけになれば、ありがたいなと思います」。
東京公演は7月11日(木)から28日(日)までBunkamuraシアターコクーン、大阪公演は8月1日(木)から3日(土)まで森ノ宮ピロティホールにて上演。チケット発売中。
取材・文:石橋法子
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