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9月に4年ぶりの引っ越し公演を行う英国ロイヤル・オペラ。ヴェルディの最高傑作『オテロ』は、2017年6月に本拠地コヴェント・ガーデンで新演出上演が行われ、ヨナス・カウフマンのロール・デビューとなったこともあり大きな話題を呼んだ。日本では2018年にローマ歌劇場来日公演『マノン・レスコー』で卓越したデ・グリューを演じたグレゴリー・クンデがこの「嫉妬に狂わされた悲劇の王」を演じる。2013年のフェニーチェ歌劇場来日公演でもこの役で喝采を浴び、今年もパリのバスチーユ、モナコのモンテカルロ、スペインのコルドバとパンプローナでも同役を演じる世界屈指の「オテロ歌い」に期待が高まる。
アントニオ・パッパーノが英国ロイヤル・オペラの音楽監督に迎えられたのは2002年。以後17年に渡る歌劇場との蜜月時代は異例の長さであり、他のオペラ・カンパニーでも(今世紀においては)あまり類を見ない。その秘密は、パッパーノの進化し続ける創造性と天才的な演劇センス、オーケストラに炎をともすリーダーシップにある。
2015年の来日時にパッパーノに取材したとき、朝10時スタートというスケジュールだったにもかかわらず、マエストロは元気溌剌。それ以上に驚かされたのは、9時半くらいからオーケストラのメンバーが上野の東京文化会館に集まり、リハーサルの準備をしていたことだった。ロンドンの人々の朝はかくも早いのか。そのパワーの源泉となっているのはつねに勤勉で健康体なパッパーノであることは明らかだった。
イタリア人の両親のもと英国に生まれたパッパーノはコレペティ出身で、声楽教師であった父親のアシスタントとして10代から歌手たちのレッスンの伴奏をしていた。1987年のノルウェー歌劇場での『ラ・ボエーム』で指揮者デビューを飾る。パッパーノが音楽監督を務めるサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団の来日公演では、壮麗な『アルプス交響曲』(R・シュトラウス)が印象的だったが、パッパーノはオペラ以外のシンフォニーでもスケールの大きな演奏を聴かせる。歌、演技、音楽と総合的なアプローチが可能なのは、彼自身がストイックな努力家であり、音楽に関して幾重もの洞察を重ねてきたからだろう。英国ロイヤル・オペラがいつもフレッシュで革新的である理由はそこにあるのかも知れない。
キース・ウォーナーの演出はオテロを陥れる家臣ヤーゴの闇の精神に迫り、潜在的な「悪」がじわじわと現実を動かしていく様子を描き出す。ヴェルディにとっても新しい書法(番号つきではない)を試みた最初の作品であり、台本作家とは5年の熟成期間を要した。細部まで演劇の力が漲る合唱も大きな聴きどころだ。
文:小田島久恵
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