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7月中旬から全国ツアーがはじまる舞台『フローズン・ビーチ』。1998年に発表されたケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)の脚本を、鈴木裕美が演出。愉快で訳ありな“5人の女”によるサスペンスコメディだ。その公開稽古が行われた。
公開されたのは<第一場>。1987年の夏、千津(鈴木杏)と親友の市子(ブルゾンちえみ)は、双子の姉妹・愛と萌(花乃まりあ二役)の父親の別荘に来ていた。そこに、愛と萌の盲目の継母・咲恵(シルビア・グラブ)が予定より早く旅行先から帰ってくる……。
継母のせいで母が死んだと思っている愛は、咲恵に苛立ちをぶつける。しかし当人はあっけらかんと笑い、ワインを飲んでいる。盲目の役のため、シルビアは焦点を合わせず少しずれた方へ顔を向けて話すが、コミュニケーションを自然に感じさせる。険悪なふたりに挟まれ、気をつかう千津。演じる鈴木杏は大きな目をキョロキョロと動かし、いたたまれなさと困惑がとても伝わる。一方の市子は、超マイペースで楽しそうだ。初舞台というブルゾンだが、緊張感はありつつも、細部まで真剣に気を配っているのが感じられる。
不穏な空気が漂う……。演出の鈴木裕美は「誰かが誰かを殺そうと思ったりもする」とサスペンスフルな雰囲気を煽りつつ、「救ったり救われたりもする不思議な本。まずは出演者4人が面白い」と強く推した。
KERA作品に2度の出演がある鈴木杏は「ケラさんの脚本はやっぱり大変。楽しみながら苦しんで、稽古するほど深まる」と感想を語る。ブルゾンちえみの演じる市子は真逆で「(市子は)ちょっとわけがわからない。論理的でなく、本能で動いている。でもけっこう憎めないんじゃないかな?」と愛着が湧いてきたようす。
花乃まりあは、性格の違う双子をどう演じるのが楽しみだ。急きょ代役として遅れて参戦したが、「温かく迎えていただいて感謝」と安心した表情を浮かべる。座組についてシルビアは「和気あいあいとして体育会系の集まりのノリ。ずっと笑っている稽古場」と紹介した。
演出の鈴木は「面白くするためなら何でもやります!みたいな4人が集まった。すでにファンの多い作品だけど、やっと自分たちの『フローズン・ビーチ』になってきた」と手応えを感じているようだ。
上演は7月12日(金)神奈川でのプレビュー公演を経て、新潟・福島・東京・大阪・静岡・愛知・高知・香川を8月末にかけてめぐる。
取材・文・撮影:河野桃子
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