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阪神・淡路大震災を題材にした、村上春樹の連作短編小説集『神の子どもたちはみな踊る』。本作が倉持裕の演出により舞台化、7月31日、東京・よみうり大手町ホールで幕を開ける。その開幕まで約1週間に迫り、稽古場ではどんな作品世界が立ち上がりつつあるのか。都内某所にある稽古場を訪ねた。
この舞台化に当たっては、表題小説から2編が取り上げられている。ひとつは、“かえるくん”と名乗る大きな蛙が、東京に大地震を起こそうとしている“みみずくん”を倒すため、サラリーマンの片桐に助けを求める「かえるくん、東京を救う」。もうひとつは、“地震男”の悪夢に悩まされる沙羅のため、その母親・小夜子の親友である小説家の淳平が、自作の物語を語って聞かせる「蜂蜜パイ」。原作ではそれぞれ独立した物語だが、今回の舞台版ではこの2作が絶妙に絡み合うことで、また新たな気づきを与えてくれる。
今回出演するのは子役(Wキャスト)を含め5人のみ。全体的にとても落ち着いた雰囲気で、プロ意識の高いキャスト、スタッフによる、いい緊張感が満ちている。この日行われていたのは、第4場から第5場の稽古。本番さながらのセットが組まれ、その移動や役者の出はけについて、演出の倉持から随時細かな調整が入る。淳平役の古川雄輝は、役の優しい人物像と自身の透明感が融合し、何とも魅力的なキャラクターをつくり上げている。その淳平が長年にわたり愛し続けるのが、松井玲奈演じる小夜子。松井の透明感が古川と似ているせいだろうか。このふたりが惹かれ合うこと、そして心の奥底で結びついていることに強い説得力がある。
その小夜子の元夫・高槻を演じるのは川口覚。川口は「かえるくん〜」の片桐役も兼ねており、陽気で人好きな高槻と、華がなく面白味に欠ける片桐というギャップのあるふたりの演じ分けが面白い。さらに「蜂蜜パイ」では語り手を、そして「かえるくん〜」でそのかえるくんを演じているのが木場勝己。台本には“2メートル以上ある巨大な蛙”と記されており、舞台で体現するにはある意味やっかいな存在だが、木場はそんなファンタジーの世界の住人にしっかりとしたリアリティを持たせることが出来る。しかもコミカルな部分も滲ませつつ。その類まれなる役者力に、改めて驚かされる。
決して派手ではない作品だが、倉持の鋭い洞察力と繊細な演出手腕があれば、その魅力を最大限に引き出すことが可能だろう。本番が楽しみでならない。
取材・文:野上瑠美子
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