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南北戦争時代のアメリカ北部で、愛し合い助け合いながら生きる四姉妹を描いた、ルイ―ザ・メイ・オルコットの不朽の名作「若草物語」のミュージカル化である、『Little Women─若草物語─』(演出:小林香)。都内稽古場では東京・シアタークリエでの初日に向けた通し稽古が行われた。
まず、心に染みるソロナンバーを2幕で披露する宮原浩暢演じるベア教授と主人公・次女ジョー役の朝夏まなと(この日は朝夏のみ衣裳をつけて稽古に臨んだ)の会話から、女性の自己実現が極めて難しかった時代に小説家として身を立てようと志すジョーの、現代に通じる生き方を巧みに提示して、物語は四姉妹が揃うコンコードのマーチ家へと遡る。あくまでも稽古場仕様の代替えが使われているセットもありながらの転換の流麗さに、すべてが本番用に創り込まれ、照明も入った舞台での絵姿の美しさへの期待が膨らむ中、長女メグ役の彩乃かなみ、三女ベス役の井上小百合、四女エイミー役の下村実生が登場。プレゼントもツリーもないクリスマスを嘆く姉妹たちを、ジョーが鼓舞し、作家になって皆の望みを叶える!そして私達はいつまでも変わらない四姉妹でいよう!と固い約束を交わすまでが快調に進み、四姉妹の賑やかな明るさが弾ける。そこに母親役の香寿たつきが帰宅。彼女がこの家の要であることが一目で分かる、宝塚歌劇団で朝夏と同じく男役トップスターを務めた人の持つ香寿のオーラ、凜とした立ち姿と優しさに賢夫人ぶりが際立ち、表現力に満ちた歌声が本作の豊かさを示してくれる。父からの手紙を読む母の周りに四姉妹が集い、父の願いと母の愛に包まれる姿が美しい。
そこから、原作の読者にはお馴染みの展開に、尚新しい風をもたらし、新たなミュージカル作品としての興趣を最後まで離さない中で、“姉妹の絆を強く信じるが故の寂寥感に苦しむジョーを奮い立たせるのが「書く」ことであり、その原動力もまた家族への愛である”という根幹が見事に伝わってくる演出に、心の綾を歌い上げる朝夏の堂々たる主演としての存在感が輝く。メグ役の彩乃にも元宝塚歌劇団娘役トップスターの出自を感じさせるひたむきさと気品とがあり、彼女とひと目で恋に落ちるジョン・ブルック役の川久保拓司とのロマンスも美しい。ベス役の井上の健気で真摯な演じぶりには涙を誘われずにはいられず、天真爛漫で、どんな我儘を言っても全く嫌味にならないエイミー役の下村の愛らしさは微笑ましく、随所に見せるダンスのキレも鮮やか。更に、深い愛情が根底にあることが感じられる村井國夫と久野綾希子が、その佇まいだけで「ザ・ミュージカル!」の香りも放つのが貴重。中でも驚かされたのは、ローリー役の林翔太の実によく通る、しっかりしたミュージカル唱法の確かさで、本番での活躍に期待したい。
全体を統括している演出の小林香の温かな目線も印象的な、作品の開幕に期待の膨らむ通し稽古をみせた本作は、9月3日(火)より東京・シアタークリエで上演後、愛知・福岡を巡演。チケット好評発売中。
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