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昨年の落語会を振り返り、『徂徠豆腐(そらいどうふ)』という古典への手応えを口にした笑福亭鶴瓶。今年の大ネタは『明烏(あけがらす)』に決めたと言う。50歳から本格的に落語と向き合った男に「古典落語」と「ライバル」をキーワードに話を聞いた。
「今回の『明烏』は東京・吉原を舞台とする落語なんですけど、物語も演出も大阪版に変えています。聴く落語としては東京を代表する(古今亭)志ん朝師匠の『明烏』が大好きなんですけど、自分がやるとなると泥臭さみたいなものを足したくなるんですよ。演出に関しては、東京にはない関西独自のお囃子を加えたらどうかなぁと。2日前かな。東京・北区の寄席で試しました。その寄席の女将がおもしろい人で“私、錦糸町のベットであなたの横で寝てて。痛かったぁ〜”と。えぇ!?と思って詳しく聞いたら、マッサージ屋で、たまたま隣りになったんですって。錦糸町やし、ベットやし、ややこしいと(笑)」
私落語と呼ばれる創作も手がける人ならば、古典落語に自分の色を加えるのも自然な流れ。だが、「壊す」だけでないのが鶴瓶色。先人であり『明烏』の名手である古今亭志ん朝の墓参りを欠かさず、長年受け継がれた古典への敬意を忘れることがない。
「古典をやらせてもらう時に思うのは、“俺がいちから作ってるわけじゃない”ということ。その上で、少しでもおもしろくしたいと自分の色を加えているんですけど、じゃあ、志ん朝師匠の『明烏』がライバルかと聞かれても、そんなこと、おこがましくてよう言えません。僕が思うライバルの条件は、同じ時代を生きているということ。僕でいえば、所ジョージ、明石家さんま、ビートたけしとかね。うらやましいと感じる部分が、いっぱいあるすごい人たちですけど、勝ち負けよりも、あの人たちと一緒に同じ時代を生きられていることがうれしいんです。そういう意味では、落語界のライバルとして講談の神田松之丞が、同じ時代に現れたことはうれしいし、刺激になる。去年1度共演させてもらったんですけど……松之丞はすごい。化物です(笑)」
実は、神田松之丞との共演時に選んだ噺が『妾馬』だった。江戸時代にもあったであろう講談と落語のぶつかりあい、その令和版。では、今年の大ネタ『明烏』はどのような噺に再構築され、育っていくのか。笑福亭鶴瓶は落語初心者にもおすすめな落語家ではあるが、点ではなく線で聴くべき表現者でもある。同じ時代を生きる観客として。
「笑福亭鶴瓶落語会」は10月24日(木)大阪・森ノ宮ピロティホールを皮切りに全国で開催。東京公演は12月5日(木)から8日(日)まで東京・赤坂ACTシアターにて上演。10月6日からの東京公演一般発売に先駆け、9月5日(木)11:00までいち早プレリザーブ受付中。9月6日(金)11:00からプレリザーブ受付開始。東京公演以外は、9月7日(土)より一般発売開始。
取材・文:唐澤和也
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