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10月4日、大阪・新歌舞伎座で日本初演のミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』が幕を開けた。田代万里生と平方元基によるふたりだけのミュージカルで、人気短編小説家のトーマスと幼なじみで書店員のアルヴィンとの友情を描いた物語だ。
本公演は、それぞれ役を入れ替えて上演する。初日は田代トーマスと平方アルヴィンで始まった。幼なじみアルヴィンの突然の死に際し、弔辞を読むために故郷に帰ってきたトーマス。しかし葬儀が始まるというのに手向けの言葉が全く思い浮かばない。「僕は彼の何を知っていたんだろう…」。トーマスの心にぽっかりと空いた穴に光がさすように、たくさんの本に囲まれた空間とともにアルヴィンが現れる。
たくさんの本棚から思い出を取り出し、互いに読み上げる。心、家、街と、少しずつ焦点を変え、内と外を往来しながら彼らの分岐点へと近づいていく。冒頭、冷たい印象のあった大人のトーマス。だがどうだろう、アルヴィンと一緒にいる少年時代の彼はとても柔らかで、純真だ。アルヴィンは無邪気そのもの。風にも雪にも翼にもなれる衣裳も印象的だった。太陽と月のような関係性が、大人になるにつれ変わっていくふたり。田代と平方、それぞれが役を入れ替えた時、この太陽と月という印象すら変わるだろう。それを思うと、ふたりミュージカルというシンプルな構成ながら底知れぬ奥深さも感じられた。
透明感のある田代と深みのある平方、双方の歌声も物語とリンクしていた。ふたりでひとつ、その印象はトーマスとアルヴィンそのものだ。情感豊かなソロはもちろん、デュエットでは磁石のようにぴったり重なり合ったかと思えば、ふたりとは思えないほど幾重にも層を描き、うっとりするほど美しいハーモニーを聴かせてくれた。音楽も照明も実にきれいで、特に小雪が舞う場面は、冬の匂いと寒さも感じられるほどだった。
スペシャルカーテンコールでは「役を相互に演じるなんて僕たちも信じられませんが、これからたくさんのお客様がパワーを与えてくれると思います」と田代。平方も「毎日、稽古してきて、今日、やっと舞台からお客様の気を感じられてうれしかった」と笑顔を見せた。そして『雪の中の天使』をデュエット、本編とは異なるリラックスした表情で歌っていたのも印象的だった。
上演中は出ずっぱり。語り、対話、歌唱と休む間もない。にもかかわらず、初日しかも日本初演の作品とは思えないほどの完成度で魅せた田代と平方。大阪公演を終えて、東京、水戸、名古屋をめぐる。回を重ねるごとにますます完成されていくことを思うと、大千穐楽にはどうなっているのか末恐ろしくもあった。完売していた東京公演も、一部追加席をチケットぴあにて発売中。
取材・文:岩本和子
撮影:西木義和
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