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演 劇

幕が開いたとたん、客席には大きな拍手が起きた。一気にステージに視線が注がれ、華やかな歌と踊りに劇場が包まれる。
11月3日(日)に明治座で音楽劇『ふるあめりかに袖はぬらさじ』が開幕した。あっと華やぐ幕開けののち、大地真央が演じるおしゃべりで、飲んべえで、お人好しな芸者の陽気な笑顔と、賑やかな登場人物達にたくさん笑わせられた。歌、三味線、踊りがふんだんに盛り込まれ、花魁たちの座敷芸など観ているだけで楽しいショータイムでは手拍子も沸き起こる。
会見では、出演の大地と矢崎広が「堅いイメージがあるかもしれないけれど、そんなことありません」と言う。実際そのとおり、軽やかでコミカルで、けれどもしっかり人の哀れや悲しみや寂しさ、そして力強さの息づく芝居だった。演出をつとめる原田諒(宝塚歌劇団)は、ロバート・キャパやリンカーンなどを主人公にした社会派演目の評価が高い。今回も、どんどんと音楽が展開し、登場人物達の心が情熱的に盛り上がるような宝塚的演出もありながら、冷静に世の中の厳しさも描く。
時は幕末。外国人の出入りする港町・横浜。開国と攘夷に揺れ動くなか、遊郭を舞台にたくましく生きる人々が登場する。恋あり、革命の志あり、ギャグもあり。有吉佐和子の名作をもとにした、軽やかで盛りだくさんのエンターテイメント音楽劇だ。2017年に初演され、半分ほどのキャストを変更しての再演となった。
再び主演をつとめる大地は、軽快な笑いと歌、三味線の演奏など多彩な芸を披露。凛とした姿、どっしりと構えた佇まいのうえで、コメディとしての軽快さも見せ、今作の大きな器となる。美しい遊女・亀遊役の中島亜梨沙は、儚げだが意思の強い女性を演じ、作品の見えない芯となった。また、初参加の矢崎の柔らかくもまっすぐな歌声により、亀遊との恋が夢のごとく美しいものにする。その周囲で、佐藤B作、温水洋一、未沙のえるなどが親しみやすい生活感をつくり、ふたりの恋路の特別さを際立たせる。高い志を持つ尊皇攘夷志士らの熱も、物語を盛り上げる。
音楽と笑いに溢れた舞台だが……必死に生きようとする彼らと、時代の大波を受け、ふと胸に詰まる思いがせり上がって涙がこぼれそうになる。けれども、袖はぬらさじ。どんなに雨が振っても日々は続くの。笑顔でたくましく生きる人間の生々しさに力をもらえた舞台だった。
上演時間は、30分の休憩をふくむ3時間15分。11月27日(水)まで明治座にて上演中。チケットぴあにてチケット発売中。
取材・文:河野桃子
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