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演 劇
福士誠治が演出を手がける『おっかちゃん劇場』の開幕が迫る。初日を約10日後に控えた稽古場を訪ねると、初の通し稽古に臨むキャストが濃密な劇世界を構築していた。
2016年に上演された福士の演出デビュー作『幽霊でもよかけん、会いたかとよ』に続いて、“家族の物語”が展開される本作。脚本・金沢知樹とのタッグも続投され、若年性アルツハイマーを患う母とその娘たちを中心とする人間模様が繰り広げられる。出演者は、田中麗奈、 若月佑美、駿河太郎、おおたけこういち、清水優、いのさわようじ、向野章太郎、渡辺哲が 名を連ね、福士と金沢も参加している。
取材日、福士は自身が演じる街の電気屋を代役に託して演出に専念していた。荒通しに望む前には、姉妹の長女・好香(このか)に扮する田中に演技指導するひと幕も。終盤のキーアイテムとなる“レコード”の取り扱いについて「発作的に生じた感情を動きに表して欲しい」といって緻密に実演してみせると、田中は大きく頷いていた。
「さぁ、行きましょうか!」という福士のかけ声で荒通しはスタート。稽古場には長崎のとある田舎町にある食堂の美術セットが組まれ、父の亡きあと、店を切り盛りする母・菊枝が帰宅した小学生の好香を迎え入れるプロローグが展開される。親子による在りし日の微笑ましい記憶が丁寧に描かれるからこそ、母の発症後に変わってしまった家族の形がより一層浮かび上がる。
将来の夢を諦め、高校卒業後に一家の大黒柱として店で働くようになった好香。田中は、母の介護に心身を張り詰めた諦念を落ち着いた声音に滲ませる。一方で、思うようにコミュニケーションを図れなくなった母がある日よどみなく喋り出したことをきっかけに「お母さんともう一度話したい」という切実な思いが溢れ出す。
妹をはじめ、幼なじみや従兄弟らの協力で母に働きかけると不意に幕を開ける“おっかちゃん劇場”。母を演じる渡辺は、病の影響で乏しくなった表情から一転する厳しくも温かい肝っ玉母さん像を見事に体現する。若月は、好香と正反対の性格で素直になれない妹の屈託をリアルに立ち上げ、姉妹の成長物語に貢献した。好香に想いを寄せる幼なじみに扮する駿河のコメディリリーフぶりは本作の清涼剤となろう。
公演は12月23日(水)〜30日(水)に、東京・本多劇場にて。ぴあでは、座席選択できるチケットを販売中だ。またPIA LIVE STREAMでは、27日(日)13:30開演回のライブ配信を実施。31日(木)23:59までアーカイブ配信を視聴できる。
取材・文:岡山朋代
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