あなたが好きなタレントの
出演情報をメールでお知らせ♪

タレント ニュース

演 劇

ロボットが教えてくれる温もり――劇団四季『ロボット・イン・ザ・ガーデン』好評上演中
2021年01月29日 19時39分 [ミュージカル・ショー]
『ロボット・イン・ザ・ガーデン』 撮影:阿部章仁

劇団四季『ロボット・イン・ザ・ガーデン』が現在、東京・自由劇場で上演中だ。原作はイギリスの作家デボラ・インストールの小説。2016年のベルリン国際映画祭では「映画化したい一冊」に選ばれた、世界中で愛されている物語を、台本/作詞・長田育恵、演出・小山ゆうなという、今もっとも演劇界で注目される気鋭のクリエイターが舞台化。劇団四季のオリジナルミュージカルとしては、ファミリーミュージカルをのぞき、16年ぶりの新作となる。

アンドロイドが人間の仕事を担い、その恩恵に預かる人もいる一方、職を奪われた人もいる近未来のイギリス。両親を事故で失ったことから無気力に日々を過ごしているベンは、庭に旧式のロボットが迷い込んだのを見つける。タングと名乗ったその壊れかけのロボットになぜか心惹かれるベン。一方で妻エイミーはそんなベンに愛想をつかし家を出ていってしまう。喪失感や葛藤を抱えながらも、このままだとまもなく止まってしまいそうなタングを修理するために、ベンはタングとともに旅に出る……。

近未来を舞台にしながら、描かれるのは、自分の思いを大切にすることだったり、相手を思いやることだったりと、アナログでプリミティブなテーマ。旅の中で様々な人や出来事と遭遇し、自分の人生に背を向けていたベンは少しずつ再生していく。ベンを演じる田邊真也は、四季の看板俳優のひとり。もともと芝居力の高い人だが、傷を抱えながらも心優しい青年という役どころを力みなく演じていて、魅力的だ。四季の地力が発揮されるダンスシーンなどの華やかさと、丁寧に紡がれていく登場人物たちの感情の繊細さが見事に融合し、質の高いオリジナルミュージカルが誕生した。

そして何といっても秀逸なのは、ロボットのタングだ。大きな四角い頭、まんまるレンズの目、無骨な鉛色の3頭身くらいの身体……まずビジュアルが最高に可愛らしい。その上、時に癇癪を起こすし、暴走もする、何ならちょっと拗ねたりもする、なんとも人間臭いところもいい。照明の光が反射しキラキラ輝くその目には、時折涙すら見えるような気すらしてくる。パペットデザイン&ディレクションは『リトルマーメイド』も手掛けたトビー・オリエ。俳優2名が息を合わせ操るさまも見事で、ちょっとした動作ひとつとっても感心しきり。それにしても、心のないはずのロボットにここまで感情移入をしてしまうのはなぜなのだろう。無機物に心があるように感じるのは、観る側の勝手な妄想か。いや、勘違いでもいいじゃないか。勝手に人間側がタングに影響されて、何かを教えられたような気になってしまった、それでもいい。タングは、こんがらがってしまった人間関係や、こんがらがってしまった心を優しくほぐす。そして、一歩ずつでも地に足をつけて歩き出すことの大切さを教えてくれる。そこには温もりが確かにある。

とにかく可愛いタングに会いに、ぜひ、劇場へ。東京公演は3月21日(日)まで同劇場にて、チケットは発売中。

(取材・文:平野祥恵)

チケットぴあ

関連タレント

演劇のニュース もっと見る

最新ニュース もっと見る