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スマートフォンで詩を綴り、現代の空気や人々の感情を鮮やかに表現する詩人・最果タヒの個展が、2・3月に巡回する。2020年に福岡と東京の来場者から大きな支持を集めた展覧会の愛知・大阪“上陸”にあたって、作家本人に見どころを尋ねた。
「最果タヒ展 われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。」チケット情報
20代で現代詩手帖賞、中原中也賞を獲得して以来、ツイッターでの作品発表、詩集の映画化(石井裕也監督作『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』)、作詞提供、ホテルとのコラボレーションなど幅広い活動で知られる最果。本展では、詩になる“直前”の言葉が集められた展示空間を通じて、来場者が主体的に詩を体感できるインスタレーションが展開される。
特に圧巻なのは、どの会場でも最大の展示面積を占める《詩になる直前の、》シリーズだろう。天井から吊るされた無数のモビール群にはそれぞれ脈絡のない断片的なワードが連なっており、来場者は回転し揺らめくモビールを分け入りながら鑑賞する。最果が企画意図を「観客がいて初めて詩が完成する空間をつくれたら」「私がいちばん鮮烈だと感じる、言葉が自分の想像を超えていく瞬間が作品に現れることが理想」とする通り、琴線に触れる語に偶然“出会う”もよし“探して”必然とするもよし、楽しみ方は来場者次第。愛知はギャラリーの形で、大阪はモビールの量でさらなる没入感を演出するという。
東京会場から登場した《座れる詩》は、丸い椅子に腰かけると詩の朗読が聞こえてくる趣向だ。愛知では『夕陽の詩』、大阪では『STAY BRIGHT』が追加され、いずれも演劇ユニット・マームとジプシーやチェルフィッチュなどの作品で活躍する俳優・青柳いづみの声で再生される。「読んだ人が自分のものとして自由に楽しめる詩」を目指していた最果は、青柳の「自分らしさを発揮するような読み方は考えていない」という姿勢に共感。「来場者の意識に自然と働きかけていくような朗読で、言葉に遠近も感じられる」と絶大な信頼を寄せる。
軽率な発言が憚られるコロナ禍では、他人の目をつい気にしてしまう。しかし、最果はこんな時こそ本展には意義があるのでは、と考える。「懸命に空気を読んで求められる自分を演じたあと、映画や文学に触れると、自分を取り戻す感覚があります。それを好きだと思えた時の自分は、誰にも否定できないものだからです」「"私"を取り戻していける、そういう場所に展示もできたらいいなと思いました」――。
『最果タヒ展 われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。』は2月13日(土)〜28日(日)に愛知・名古屋パルコ西館6階パルコギャラリー、3月5日(金)〜21日(日)に大阪・心斎橋パルコ14階 パルコイベントホールと巡回する。チケット販売中。
取材・文:岡山朋代
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